3-9.チック症、トゥレット症候群

著者:有園正俊 公認心理師

チックは、子どもの時期に発症し、一過性で済むことが多い症状です。しかし、チックを経験した人が、強迫症/強迫性障害(OCD)を経験することもよくあります。

1 用語説明

チック――自分では意図しないのに、ピクピクッとかパチパチッと体の一部が突発的に動いてしまうものです。顔の一部、首、肩、手、足などが勝手に動いてしまうもの(単純性運動チック)や、音声チックといって、勝手に声を上げてしまうものがあります。
診断基準(DSM-5)によると、チックは「突然の、急な、周期的に繰り返す、リズミカルではない、パターン通りの運動または発声」と定義されます。[1]

(一過性)チック症―――1年以内に治まるものです。

複雑性運動チック―――動きの時間がやや長く、いくつかの動作が組み合わさってものです。物や人を触ったり、たたいたりするような動きをすることがあります。

持続性・慢性(運動性、音声)チック症――― トゥレット症候群ほど、チックの種類は多くないが、ほとんど毎日生じ、1年以上続いている場合です。

トゥレット症候群―――2つ以上の運動チックと1つ以上の音声チックの両方があり、1年以上、続いている場合です。[1]

いずれの新患でも、18歳以前にチックの発症経験があります。

2 特徴

・神経精神障害であり、てんかんのような神経疾患(神経科、神経内科で扱う)とは区別されます。
・脳の大脳基底核のドパミン神経系の異常が生じています。

・発症は4-6歳、重症度のピークは10-12歳です。ただし、他の年齢で発症する人もいます。
男性の方が女性よりも経験する割合が多い。

通常は一過性です。
多くのチックは、数年後には最終的にはなくなるか、大幅に改善します。

ストレス、不安、疲れが強いときは、悪化することがあります。

併存しやすい疾患・障害:
注意欠陥多動性障害(ADHD)、強迫性障害(OCD)

3 OCDとの関連

OCD患者のうち20-30%が、現在もしくは過去にチックを経験しています。
チック症を経験した人のうち、22-44%はOCDを経験します。[3]

OCDとチック症をいずれも経験している人では、通常、18歳以下の子どもの時期に、どちらかの症状が始まります。

OCDもチックも、動作が繰り返されることが共通しています。
チックは、強迫観念が伴いませんが、不安、焦りなどの感情、緊張しやすいなどの傾向が伴うことがあります。

チックもOCDは、小学校くらいまでなら、時期が経つと、治まることがあります。しかし、何年も症状が続いたり、思春期以降になると、自然な改善は難しくなる傾向があります。

4 治療

・チックは、軽度の場合は必ずしも治療する必要はありません。[2]
重度の場合や、慢性的に日常生活に支障をきたしている場合は、治療という方法もあります。

・診療は、精神科、小児・児童精神科です。
・海外では行動療法が推奨されますが、日本の精神科では、薬物療法のみの診療がほとんどです。そのため、治療経験が豊かな専門家に出会うことが難しいです。

3-1)行動療法

チックのための包括的行動的介入―――Cognitive Behavioral Intervention for Tics (CBIT)

その中で用いられる主な行動療法の技法:

ハビット・リバーサル(習慣逆転法)―――チックを引き起こす感情に働きかけることと、チックへの衝動を和らげ、それに替わる行動を身に着けるようトレーニングします。

曝露反応妨害(ERP) ―――チックという動作を反応妨害し、不快な感情が鈍くなっていくようにトレーニングします。[2,3]

3-2)薬物療法

薬物療法は、チックが重症、もしくは日常の活動に影響を与える場合にのみ推奨されます。すべての患者さんに効くわけではありません。 [2,3]

抗精神病薬 リスペリドン、アリピプラゾールなど

中枢性交感神経抑制薬 クロニジン

4 参考

[1]アメリカ精神医学会(APA)[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修]「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(邦訳2014年)
[2]NHS ガイドライン チック トゥレット症候群
[3]Martin E. Franklin, Ph.D.,* Julie Harrison, B.A., and Kristin Benavides, B.A.(2012) Obsessive Compulsive and Tic Related DisordersChild Adolesc Psychiatr Clin N Am. 21(3): 555–571.

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