1-3.認知行動療法と対処の基本

著者:有園正俊 公認心理師

認知行動療法は、心理学を用いた治療法です。
日常生活で生じてる問題行動を、本人が生活するのに適した行動に変えていくことを支援して、問題の解決を目指します。[1,2]
うつ病、パニック障害、PTSD、統合失調症など、精神科のさまざまな精神の病気、発達期の療育などで用いられ、いろいろな技法があります。
患者さんと治療者が共同で行います。治療者は強制的なことはしません。
患者さんが、ただ話して、治療者が聞くだけという受身の治療ではありません。具体的に患者さんと一緒にできそうなことを考えて、取り組んでいきます。

[1]認知行動療法の基本

認知行動療法基本モデル(図2)では、認知、感情の他に、行動、身体の反応、環境(自分以外の要因)も考えていきます。

認知行動療法の基本モデル

認知・・・思い浮かぶ考え、記憶、イメージ・映像。思い浮かぶものが文章で表せるものは考えです。

感情・・・水面に表れるさざ波のように心の中(意識)で感じられる動き、波です。
くわしくは、精神科全般>1-2.感情・情動とはをご覧ください。

行動・・・体を動かすこと、活動。

身体の反応・・・緊張、感覚が敏感になる、ドキドキする、疲れる、頭痛・・など。
・感覚が敏感とは、音が実際の音量以上にうるさくて感じられ、気になって仕方がない、嫌なもの・人がやけに近くにいるように感じられる・・など。

人の中では、この4つがお互いに影響しあっています。さらに、その人を取り巻く「環境」も、影響します。

精神科の病気や問題となる行為が続いているということは、認知、行動、身体、感情、環境の5つの中で何らかの悪循環が生じていると考えます。

この5つの中で、
感情と、身体は、直接、自分でコントロールできません。
環境は、変えられる場合は、限られます。変えられる場合、環境調整と言い、例えば、職場での就業時間、勤務内容などを調整してもらいます。

認知や行動で、変えられる部分を見つけて、働きかけていくので、認知行動療法と言います。

[2]観察と評価(アセスメント)

認知行動療法では、患者さんの症状に関連した状況をくわしく調べ、評価します。
このような調べて、評価することをアセスメント(assessment)と呼びます。

主な調べる項目の例:
基本モデルの5つの状況はどうなっているのか
1日、1週間での生活状況
就学、就労の状況
家族、周囲の人との関係

セルフモニタリング(自己観察)といって、患者さんが自分の状況を観察し、表などに書いて整理することがあります。
心理師、看護師が認知行動療法を行うことがありますが、その場合、主治医からも情報を聞き、連携して行うことが望ましいです。

[3]ケースフォーミュレーションと心理教育

アセスメントで調べた結果から、どのようなことが起こっているかを分析することをケースフォーミュレーション行動分析ともいう)をします。[1]

例1)忘れ物が気になる人
環境=学校の先生が厳しい
考え=「もし忘れ物をして、皆の前で怒られたらどうしよう」
感情=不安、恥ずかしい
行動=持ち物を確認する
身体の反応=少し緊張

例2)交差点で乱暴な運転の車に出合った人
環境= 信号が変わっているのに、車が強引に曲がってきた
考え=「乱暴な運転だ。何を考えているんだ」
感情=怒り
身体の反応=頭に血が上った感じ
行動=走り去る車をにらみつけた

精神的に悩ましい状態が、一時的ではなく、いつまでも続いているときには、この5つの間に、何らかの悪循環が起こっていると考えられます。

侵入思考と反応の悪循環

周囲の人への巻き込むとは、家族に大丈夫か聞くことや、相手を攻撃すること、物やお金を過剰に要求するなどです。その度合いが過剰だと、問題となります。

[4]対処の目安と方向

症状の内容や重症度によって異なります。

(1)軽度の場合

それほど重く段階ならば、自分の状況を上記の悪循環のしくみに当てはめ、どのようになっているかを知ります。

現状は、それほど危険でもないのに、不安感や嫌な感情が強く感じられるならば、脳によって、過敏に反応しているのかもしれません。

その場合、
自動的に思い浮かんでしまう考え・感情は、追い払おうとすると、かえって気になり、苦痛が増す特性があります。
参考:1-4. 嫌な考えへのとらわれ

そのため、そのような考え・感情が気になっても、真に受けないで、放っておけるといいのです。
感情は、放っておくと、時間が経てば、その鋭さを失い、軽減していく特性があります。
逆に、感情がいつまでたっても治まらない場合、何らかの反応した考え・行動をしているということになります。

放っておくには、何もしないでいると、気にならないのは難しいため、何か他のことをします。家事でも、ただ景色を眺めたり、体を動かしたりするようなことでもいいのです。
そのために、マインドフルネスを用いても効果が得られます。

・嫌なことを避けて、自宅に引きこもっていると、かえって嫌な思考の症状に費やす時間が増えてしまいます。また、昼夜逆転をしていると、精神症状のコントロールに影響します。→対処法:自分とのつき合い方セロトニンと活性化のページ

(2)独力での改善が難しい場合

精神科で相談することをお勧めします。
治療は、薬物療法の他に、カウンセリングを受けられるところもあります。
カウンセリングには、さまざまな精神療法があります。(→参考:3-2.精神療法・心理相談を受けるには
このような精神症状に対し有効なのは、主に認知行動療法です。

(3)認知行動療法の進め方の大筋

精神疾患で認知行動療法が適応できるものには、治療マニュアルが出されているものもあります。
厚生労働省>心の健康のページに、うつ病、不安障害、強迫症、PTSDなどの治療マニュアルが載っています。

アセスメント:
その人の過去、現在の状況を聞き、上図の基本モデルのような何らかの悪循環が生じていないかを調べていきます。
過去のことを聞くのは、嫌な感情に敏感になってしまったのは、それまでに何らかの強いストレスにさらされた体験がある可能性が考えられるためです。

ケースフォミュレーション:
上記の認知行動療法の基本モデルに当てはめて整理したのは「今の状況」についてです。それを過去の記憶を思い出したときに、どのような関係になっているのかにも当てはめ、検証していきます。

治療:
認知行動療法には、いろいろな技法があるので、治療者や患者さんの状態によって、具体的にどのような技法を行うかが異なります。

・不安など嫌な感情への敏感性を治療していく曝露療法。
・過去のつらい体験がトラウマになってしまっている場合、治療者ともに、トラウマ向けの技法。
・現状を受け入れ、今に注意を向けていく技法(弁証法的行動療法(DBT)、ACT、マインドフルネス)

・対人関係の問題やコミュニケーション方法に働きかける技法。

認知行動療法のできる専門家を探すには、精神科全般>3-2.精神療法・心理相談を受けるにはを参考にしてください。

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