1-2.嫌な感情と考えの症状

[1]感情と考えとを分けて考える

思い浮かぶ気持ちを、次の2つに分けて表現してみます。

認知・・・思い浮かぶ考え、イメージ。集中力が弱まる、記憶に自信がなくなる場合もあります。 思い浮かぶものが文章で表せるものは考えです。

感情・・・短い単語で表せられる心の動き、気分です。嬉しい、楽しい、満足感、恐怖、不安、嫌、怒り、悲しい、イライラ、憂うつ、落ち着き、衝動的・・・。

認知行動療法基本モデル(図2)では、認知、感情の他に、行動、身体の反応も考えていきます。このようにして状況を調べることをケースフォーミュレーションと言います。

認知行動療法の基本モデル

行動・・・体を動かすこと、活動。

身体の反応・・・緊張、感覚が敏感になる、ドキドキする、疲れる、頭痛・・など。
・感覚が敏感とは、音が実際の音量以上にうるさくて感じられ、気になって仕方がない、嫌なもの・人がやけに近くにいるように感じられる・・など。

人の中では、この4つがお互いに影響しあっています。
それに、自分以外のこと、人を取り巻く「環境」も、影響します。

例1)忘れ物が気になる人
環境=学校の先生が厳しい
考え=「もし忘れ物をして、怒られたらどうしよう」
感情=嫌
行動=持ち物を確認する
身体の反応=少し緊張

例2)交差点で乱暴な運転の車に出合った人
環境= 信号が変わっているのに、車が強引に曲がってきた
考え=「乱暴な運転だ。何を考えているんだ」
感情=むかついた
身体の反応=頭に血が上った感じがした
行動=走り去る車をにらみつけた

精神的に悩ましい状態が、一過性ではなく、いつまでも続いているときには、この5つの間に、何らかの悪循環が起こっていると考えられます。

侵入思考と反応の悪循環

周囲の人への巻き込むとは、家族に大丈夫か聞くことや、相手を攻撃すること、物やお金を過剰に要求するなどです。その度合いが過剰だと、問題となります。

[2]つらさが増して追い詰められる状態

精神的に追い詰められた場合の説明図

強いストレス、精神的に辛い状況に、襲われたり、それが何度も繰り返されていくと、そのようなことへの警戒が強くなります。
そのような体験をしたのが、子どものときの人もいれば、大人になってからの人もいます。
そして、「これ以上、ストレスが来たら、耐えられない」「もっと悪いことが起こったらどうしよう」という思いもよぎりやすくなり、以前は、特に気になっていなかったことでも、悪い方にとらえがちになってしまいます。

そのような状況が、一時的ではなく、長く続く場合、精神症状(病気)と言えるかもしれません。できれば専門医にご相談ください。

脳の感情をつかさどる部分が、嫌な感情をもたらすものに反応しやすくなっているためと考えられています。

実際には恐れるほどの状況でなくても、脳の中で恐怖を敏感に感じてしまうようなことが起こります。
タヌキ君の例ですと、断崖絶壁に感じられても、他のタヌキには、余裕のある場所に見えます。
脳の症状は、そんな錯覚を感じさせることがあります。

[3]改善するには

対処は、症状の重症度によって異なります。

(1)軽度の場合

それほど重く段階ならば、自分の状況を上記の悪循環のしくみに当てはめ、どのようになっているかを知ります。

現状は、それほど危険でもないのに、不安感や嫌な感情が強く感じられるならば、脳によって、過敏に反応しているのかもしれません。

その場合、
自動的に思い浮かんでしまう考え・感情は、追い払おうとすると、かえって気になり、苦痛が増す特性があります。
参考:1-3. 嫌な考えへのとらわれ(強迫思考)

そのため、そのような考え・感情が気になっても、真に受けないで、放っておけるといいのです。
感情は、放っておくと、時間が経てば、その鋭さを失い、軽減していく特性があります。
逆に、感情がいつまでたっても治まらない場合、何らかの反応した考え・行動をしているということになります。

放っておくには、何もしないでいると、気にならないのは難しいため、何か他のことをします。家事でも、ただ景色を眺めたり、体を動かしたりするようなことでもいいのです。
そのために、マインドフルネスを用いても効果が得られます。

・嫌なことを避けて、自宅に引きこもっていると、かえって嫌な思考の症状に費やす時間が増えてしまいます。また、昼夜逆転をしていると、精神症状のコントロールに影響します。→対処法:自分とのつき合い方セロトニンと活性化のページ

(2)独力での改善が難しい場合

精神科で相談することをお勧めします。
治療は、薬物療法の他に、カウンセリングを受けられるところもあります。
カウンセリングには、さまざまな精神療法があります。(→参考:精神療法・心理師とは
このような精神症状に対し有効なのは、主に認知行動療法です。

(3)認知行動療法の進め方の大筋

アセスメント:
その人の過去、現在の状況を聞き、上図の基本モデルのような何らかの悪循環が生じていないかを調べていきます。
過去のことを聞くのは、嫌な感情に敏感になってしまったのは、それまでに何らかの強いストレスにさらされた体験がある可能性が考えられるためです。

ケースフォミュレーション:
上記の認知行動療法の基本モデルに当てはめて整理したのは「今の状況」についてです。それを過去の記憶を思い出したときに、どのような関係になっているのかにも当てはめ、検証していきます。

治療:
認知行動療法には、いろいろな技法があるので、治療者や患者さんの状態によって、具体的にどのような技法を行うかが異なります。

・不安など嫌な感情への敏感性を治療していく技法。
・過去のつらい体験がトラウマになってしまっている場合、治療者ともに、トラウマ向けの技法。

・対人関係の問題やコミュニケーション方法に働きかける技法。

認知行動療法のできる専門家を探すには、強迫性障害の案内板>3-2.医療・相談先を探すにはを参考にしてください。

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