1-3.嫌な考えへのとらわれ

[1]嫌な考えが頭から離れない症状

考えは、
自然に思い浮かんでしまうもの
と、
自分で意識して行っているもの

とに分けられ、誰にでも両方あります。

自然に思い浮かんでしまう考え(雑念、イメージ)は、自動思考と呼ぶことがあります。
しかし、OCDのように自分が望まないのに浮かんでしまう考えを侵入思考と呼びます。

侵入思考が繰り返し現れて、意思に反して、なかなか消えない
強迫観念、強迫思考などの精神症状

[2]診断

嫌な考えにとらわれる症状があるからといって、OCDとは限りません。OCD以外にも、うつ病、PTSD(心的外傷ストレス障害)・適応障害などのトラウマ関連疾患、統合失調症など、多くの精神疾患で生じます。

病気によっては、思考の勢いが非常に強く、対処が困難なこともあるので、専門医に受診し、正しい診断を得たうえで、対処してください。

[3]侵入思考の特性とケースフォーミュレーション

侵入思考・強迫観念は、自然に思い浮かんでしまうものです。
そして、なくそうとすると、かえって意識してしまい、思い浮かびやすくなってしまう特性があります。

この種類の例えで有名なのが、白クマ効果の実験です。
(ピンクのゾウとか色と動物をアレンジしている人もいます^^;)
「2分間、自由に考えていいのですが、白クマのことだけは考えないようにしてください。」とお願いします。すると、かえって白クマという言葉が頭によぎってしまうというものです。白クマという単語は、普段なら、思い浮かべることはない単語のはずなのにです。[1]つまり、ある考えをなくそうと意識すると、かえって気になって、頭によぎりやすくなるのです。
侵入思考をなくそうとするという発想自体、そもそも無理があります。

侵入思考がなかなかなくならない場合、侵入思考に対し、なんらかの反応した考え(頭の中で意識した考え・強迫行為)をしているはずです。

侵入思考と反応した考え

それを繰り返すことで、かえって症状が強化されるという悪循環になっていると考えられます。

その人の症状を観察して、認知行動療法の基本モデルを用いて、どのような関係になっているかを調べるケースフォーミュレーション(行動分析)を行います。
ここでは、認知を、侵入思考と、それに反応した解釈、頭の中の強迫行為の3つに分け、感覚への過敏性がある場合を考えます。

強迫思考のしくみ

強迫思考への認知行動療法では、上図の5つが、関係しあっていると考えられます。[2]
その5つの要素のうち、
直接はコントロールできないものは、強迫観念(侵入思考)、感情、感覚過敏
→コントロールをあきらめる。いじくらない。

コントロールできるものは、思い浮かぶ考えに反応した解釈と強迫行為。
→これを精神療法で変えていきます。

[4]対処のポイント

1)考えと、事実・真実とは同じとは限らない。
→混同していないか?区別します。
嫌な考えや感情は、苦痛であっても、自分の体内だけの問題で、それ以上に現実の被害があるわけではありません。放置します。
・宗教、道徳、性、犯罪など、自分の考え方が、一般の人々よりも強固で、無理があるる場合、それらへの考え方(認知)に働きかける技法があります。

2)記憶の特性を利用する
忘れたくない考え=大事な考え→自動的に何度も思い返している
忘れてしまう考え=大事ではない、どうでもいい考え→自然に放置され、思い出すことも減っていく。
このしくみを利用すると、侵入思考・強迫観念を放置することで、嫌な考えがわくことも、自然に減っていきます。

つまり、強迫観念は、いじくらない。
温泉のお湯のように、頭の中に、流し放し、よぎるままに放置します。
⇒「よぎっている」と気づくだけにします。

3)現状を受け入れる(アクセプタンス)
今の強迫観念がよぎる不快な状態をあるがまま受け入れ、しばらく共存することを目指します。

4)犬の例え
犬は、目を合わせたり、犬に反応して逃げ出すと、かえって寄ってきます。
その場合と同じように、嫌な思考も恐れて逃げたり、いじったりすると、よけいこびりつきます。
嫌な考えは、犬と同じように、追い払いもしないけれど、相手にもしないで、
無視して通り過ぎられるといいのです。

5)無重力の例え
宇宙船の中の無重力な空間に浮いている自分を想像してみてください。
YouTube 無重力 若田光一宇宙飛行士の動画) 

自由に動けません。地上のように動こうと、もがくと、かえって体が回ったりしてうまくいきません。
頭の中の考えも、無重力で浮いているもののように、整理が難しく、完璧に扱えなくて当たり前です。

無重力に逆らえないのと同じように、
頭の中の嫌な考えは、無重力の宇宙船内で浮いている物のように、元々、自由に扱えるものではありません。
頭の中でプカプカ漂わせて、そのままにおきます。

6)他のことへ注意を広げる
このようにして強迫観念があっても、他のことをしたり、他のことへ注意を広げます。
そのときに、強迫観念から逃げるという動機ではなく、自分から進んで、他のことするようにします。
あなたには、「今」そのとき、どうするかを選ぶことができる部分があるのです。

注意を向けることは、次のページを参考にしてください。
補足>マインドフルネス
これらの方法は、認知行動療法の技法のいくつかを応用したものです。

7) 嫌な感情が強く、他に注意を広げることが難しい場合、曝露療法など認知行動療法の他の技法を用います。自分では対処が難しければ、このような症状に詳しい専門家に相談してください。

このようなトレーニングを重ねることで、徐々に強迫観念がよぎっても、それほど気にならなくなっていきます。しかし、それには、しばらく期間がかかります。強迫観念は、自分で減らそうとか意識するとかえって、なくなりません。何カ月もたった頃に、「昔ほど頭によぎらなくなった」と気づくような感じです。

参考

[1]スタンレイ・ラックマン著、監訳者作田勉「強迫観念の治療」世論時報社(2007)
[2]Aaron Beck MD, Gail Steketee Ph.D., Sabine Wilhelm Ph.D.[著] Cognitive Therapy for Obsessive-Compulsive Disorder: A Guide for Professionals, New Harbinger Publications, Inc; 1 edition (2006)

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