2-4.抜毛症と皮膚むしり症

貧乏ゆすり、関節をポキポキ鳴らす、つばを吐く、ガムを噛むなど、体のどこかを動かす癖を持っている人は、案外、多いものです。このような癖があっても、自分の体に害がなかったり、他人に迷惑がかからないようでしたら、病気ではありません。
しかし、抜毛や皮膚つまみが高じて、その部位が傷ついていたり、学校や職場への社会参加にも支障をきたすと問題となり、精神疾患にあてはまる場合があります。
抜毛症、皮膚つまみ症は、診断基準DSM-5では、強迫症/強迫性障害(OCD)に関連した疾患として分類されています。

1.抜毛症とは

健康な毛を抜くことを繰り返してしまい、コントロールが困難な病気です。

診断基準(DSM-5[1]による)

A.毛を繰り返し抜くことで、毛が喪失してしまった部分がある。
B.毛を抜くことを減らそう、止めようと繰り返し試みる。
C.毛を抜くことで、苦痛、社会的、職業的など重要な場面で支障をきたしている。
D.E.他の疾患では説明できない。

・体毛の喪失(抜いた跡が目立つほど)が条件です。
ただし、髪型、カツラ、帽子、服装などで、隠す人が多く、他人にはわかりにくいことがあります。
毛をいじる癖や、意図的に抜くことは、対象になりません。
毛を抜く部位は、人によって異なり、頭髪、顔(眉毛、まつ毛、鼻毛、ヒゲ)、体のあらゆる毛を抜く場合があります。

2.皮膚むしり症(スキンピッキング)とは

皮膚をひっかき、はがして傷つけてしまう行為を繰り返してしまい、止めることが困難な症状です。

診断基準(DSM-5[1]による)

A.皮膚むしり行為を繰り返すことで、皮膚が損傷している。
B.皮膚むしり行為を減らそう、止めようと繰り返し試みる。
C.皮膚むしり行為によって、苦痛、社会的、職業的など重要な場面で支障をきたしている。
D.E.他の疾患では説明できない。

・よく見られるのは、指のツメの周りの皮膚です。ツメ噛みをすることもあり、ツメが極端に短くなってしまっていることがあります。
・顔、唇の周り、腕、首など、服から露出している部位で行ってしまう人もいます。
・かさぶた、小さなデコボコ、ニキビ、固くなった角質などをむしることがありますが、問題のない皮膚をむしることもあります。

3.特性

1)発症とその後の経過
不安、ストレスの強い出来事、退屈、がきっかけとなることがあります。
抜毛したときの緊張と満足感、皮膚の突起が取れた爽快感が、きっかけとなることもあります。
ただし、そのような状況が治まった後も、これらの症状は続くことがあります。

思春期・青年期に発症することが多い。
症状がしばらくの期間続いた後、消失したり、出現したりを繰り返すこともあります。

2)行為は隠したい
人前(家族以外)では、行為をなるべくしたくなく、恥ずかしいと思っていることもよくあります。
症状が悪化すると、外出、通学・通勤などを避けるようになります。

3)道具を使う人もいる
毛抜き、ピンセットなど。

4)併存疾患と分類
・発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症)、強迫症など、いろいろな精神疾患と併発することがあります。
身体に焦点化された繰り返し行為(BFRBs)として、分類されることがあります。体の外見やキズを引き起こすような行為が、衝動的に繰り返され、コントロールが難しいものです。他に
ツメ噛み(ただの癖ではなく、キズとなるレベル)、 強迫的髪切りが含まれます。
(BFRBsはBody-focused repetitive behaviorの略。)

4.治療

4-1)症状の観察と診断

抜毛や皮膚つまみは、その部位を見せてもらえれば、わかりやすい症状です。

しかし、患者さんの中には、症状の背景に
ストレスへの対処がうまく行っていない、
学校や仕事で苦手な問題を抱えている、
精神的な能力・性格にどこか偏りがあるが本人が気づいていない、
自分の困りごとを、他者に話して伝えることが難しい、
他の精神疾患を併存している
場合などがあります。
そのため、患者さんの状況の全体を診て、治療を勧めていくことが大事です。

4-2)精神療法

ハビット・リバーサル訓練(HRT)
(認知)行動療法(CBT)の技法で、問題となる癖や行為を妨害する、別の行動をして習慣(habit)を変えていく技法です。

気づきの訓練(Awareness Training)
まず、自分が抜毛や皮膚つまみをしていることに気づくことが大事です。意識しないうちに、自動的に、いつのまにかしているという場合もあるためです。

刺激制御
動作が始まる可能性を減らすために、そのような衝動が起きやすい環境を変えたり、「スピードバンプ(勢いを抑えるしくみ)」として手袋や指サックなどの方法を探して、実行します。

拮抗反応訓練(Competing Response Training)
抜毛や皮膚つまみをしたくなるときに、それに代わる行動をするように練習します。
どこでもできて、他人には気づかれにくい行為だと行いやすいです。
例:手や服をギュッと握るなどして、指を使えないようにする。

これらの技法を、患者さんの生活に合わせて、取り組むやすいように導入していきます。

リラクゼーショントレーニング、弁証法的行動療法などを、これらに加えることもあります。[2]

抜毛や皮膚つまみに代わる行動を毎日続けます。一般に、3週間から1ヵ月、代わりの行動が続き、それが習慣がとなり、症状も治まっていきます。ただ、症状がいくらか残っていると、再発してしまうため、できるだけ完全に変えます。

4-3)薬物療法

(米国食品医薬品局によると)効果が確認されたものはありません。

抜毛症、皮膚つまみ症では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を用いた検証研究では、一般に、髪、皮膚をいじる症状自体を減らすのに効果的ではないようです。
ただし、行動療法にSSRIやクロミプラミンというSRI併用することはよく行われてます。[2]

研究段階では、セロトニン以外の神経伝達物質に影響を与えると思われる薬品で、効果が期待されているものがあります。抗精神病薬のオランザピン、グルタミン酸モジュレーターN-アセチルシステイン:NAC)などが研究されています。[2]

参考

[1]アメリカ精神医学会(APA)[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修]「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(2014年)
[2]Martin Franklin, Kathryn Zagrabbe,Kristin Benavides.Trichotillomania and its treatment: a review and recommendations.Expert Rev Neurother. 2011 Aug; 11(8): 1165–1174.
[3]James Claiborn, Cherry Pedrick.The Habit Change Workbook: How to Break Bad Habits and Form Good Ones.New Harbinger Pubns Inc (2001)

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