著者:有園正俊 公認心理師
うつ病の専門サイトはたくさんあるので、くわしくは下のリンクを参考にしてください。
強迫性障害では、うつ症状を伴うことがあります。ここでは、なるべく強迫性障害に関係するポイントを取り上げます。
抑うつ状態・・・一時的な抑うつな気分なら、誰でも経験しますし、病気とは限りません。例えば、試験に落ちた、異性にふられた、家族が大きな事故にあった・・・というように、気分が落ち込み、食欲がなくなったり、なかなか眠れなくなったりするものです。
通常は、自然に回復しますが、2週間以上たっても改善しない、自力での回復が困難になってくると病気・症状の域となります。
1.うつ病(抑うつエピソード)の症状
うつ病の診断基準は、A-Cをすべてに当てはまる場合です。[1]
A.次の症状のうち5つ以上を抱えます。
精神面:
1)気分の抑うつ、悲しみ、空虚感、絶望感が、ほぼ毎日、一日中見られる。
2)興味や喜びが喪失、もしくは著しく減る
7)無価値感、罪悪感
8)思考力・集中力の減る・決断が困難
6)気力の低下
5)あせり、いらいら
9)死についての反復思考
身体面:
3)体重の大きな増減(食欲が減る場合と増える場合とがあります)1ヶ月で5%以上
4)睡眠障害(不眠または睡眠過多)
5)体をじっとしていられない、反応が遅い(会話の返事、体の動き)、会話が少ない
6)疲れ、体が動かない
B.苦痛と社会・仕事での支障があります。(自分ではコントロールが難しい)
このような状態が、2週間以上、ほぼ毎日続きます。
C.他の疾患や薬剤によるものではない。他の精神疾患では説明でできない。
このような状態を、抑うつエピソードとも言います。エピソードとは、うつ、躁といった気分の症状が出ている期間です。
2.特性
・女性の割合が多い(男性の1.5-3倍)。
・経験する人の割合は人口の7~10%前後。
・いくつかの特徴を併せ持つタイプがある。(例、不安性を伴う、非定型、メランコリア型など)
・併存しやすい精神疾患:
強迫症(OCD)、パニック症、摂食障害、パーソナリティ障害、アルコールなどの物質県連障害。
元々、OCDを抱えていた人が二次的にうつ病になることもあれば、始めはうつ病であった人が、後で強迫症状が現れる場合もあります。
3.症状の内容
・頭の中では、否定的な考えにとらわれてやすくなります。生きる価値がない、自分が弱い人間だ・・・というような考えで、そこから考えを切り替えることが難しくなります。
これは症状によるもので、健康な人は、生きる価値のようなことを、普段あまり考えません。
人に限らず生き物は、生きて当たり前なので、そもそも「生きる」ことに価値は必要な条件ではないのです。
・症状に波があります。時間帯、日、季節など、人によって、様々な心身の調子に変化があります。
・日内変動・・・朝起きたときから午前中はとても気分が重く、体調が優れず、午後から夜にかけてしのぎやすくなります。でも、これがこうじて昼夜逆転の生活になってしまうのは、よくありません。
・決断が苦手・・・物事を否定的にとらえたり、将来を悲観的に考えがちなため、物事を決めるのが難しくなりがちです。 そのため、生活上の大きな変化や決断は、無理せず、急がない、あせらない方がいいことがあります。
・結婚、昇進、引越し、出産・・・など他人から見れば、一見幸せに見られる出来事でも、本人には、非常なストレスとなっていることがあります。
4.診療
診断:うつ病は、精神科では患者数が多く、ほとんどの精神科医が対応できる病気(心療内科でもOKな場合もある)です。しかし、そううつ病や気分変調性障害などとの区別が、専門家でも難しい場合もあります。
次の検査を取り入れている医療機関があります。
・心理検査・・・ベックのうつ尺度(BDI)など。
・ 血液検査・・・うつ病では血液中のPEA(リン酸エタノールアミン)の濃度が低いため。
・光トポグラフィー検査・・・近赤外線を用いた装置で、頭の血流を測定します。
1)薬物療法:
・抗うつ薬(SSRI、SNRI、三環系、四環系、トリアゾロピリジン系)など。
2)精神療法
・認知行動療法・・・行動活性化療法、認知再構成法[2]などの技法を用いることがあります。
行動活性化療法とは、少しずつ無理のない活動(散歩、家事など)を、日常生活に取り入れるようにしていきます。行動に働きかけることで、気分、考え方も変化していきます。
・対人関係療法・・・日本では、まだ行っている医療機関がほとんどありませんが、世界的には、うつ病の治療として、エビデンス(科学的根拠)が証明されている治療法です。
3)環境調整
職場や学校で、本人に負担がかかりすぎないよう、周囲の人に協力していただき、休業や勤務時間、仕事量、配置などを調整することです。
4)リハビリテーション
重症の時期には、睡眠、生活のリズムを安定させることが大事です。
5)復職
職場への復帰のために、医療機関によってはリワーク・プログラムを行っているところがあります。
また、勤務先によっては、主治医・産業医と共同して復職プログラムを設定する場合もあります。
5.その他の配慮
・いろいろな疑念が湧きあがります。
例:自分が精神科にかかったことで、会社を辞めさせられるのでは?
不利な個人情報が漏れるのでは?・・・といった心配はする人
→医療や保険に関係する職場の人には、厳重な守秘義務が課せられています。そのため、そのような心配はいりません。
・休職や、長期の休暇が必要な場合も主治医、勤務先の産業医などに相談してください。必要に応じて診断書を作成していただけます。
・お金に不自由していても、障害者自立支援医療など福祉の制度を使えば、自己負担が安くなる場合があります。(参照:4-5.就労・生活・福祉などの相談先、4-6.医療費・福祉制度)
6.参考
リンク
みんなのメンタルヘルス>こころの病気を知る > 病名から知る > うつ病
UTU-NET うつ・不安啓発委員会によるうつ病、パニック障害、強迫性障害(OCD)の情報が掲載
ママブルー 産前産後イライラしたり、意味もなく悲しくなったり、赤ちゃんを愛せない、やる気が起きないなどの悩みを抱えている方に、少しでも心が軽くなる情報や役立つ情報をお伝えするコミュニティーサイト。
みんなで分かち合えばもっと楽になれるよ!~うつ病・心身症・ストレス性精神病
認知療法:
こころのスキルアップ・トレーニング うつ病と不安障害への認知療法を紹介したサイトです。
みけにゃんProject~認知療法で憂うつな気持ちとバイバイするにゃ~
管理人自身による克服体験と収集した情報が掲載。みけにゃんは、その姉妹サイトで、うつ病向けの認知療法がわかりやすく載っています。
書籍
[1]アメリカ精神医学会(APA)[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修](2014)「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
[2]大野裕「こころが晴れるノート」創元社(2003)自分で学べる認知療法の本です。