3-6.抑うつ障害② うつ病以外

著者:有園正俊 公認心理師

疾患名

抑うつ障害には、うつ病の他にも次のような精神疾患があります。

1)持続性抑うつ障害、気分変調性(ディスチミア)
2)非定型の特徴を伴う抑うつ障害 
3)不安性の苦痛を伴う抑うつ障害
4)月経前不快気分障害、周産期うつ病
5)季節性感情障害(SAD)
6)(いわゆる)新型うつ病

いずれも、このような病気によって、社会生活や仕事で支障をきたしているレベルです。

1)持続性抑うつ障害、気分変調性(ディスチミア)

1)抑うつ気分がほぼ一日中あり、ない日よりも、ある日のほうが多い。

2)次のうち、2つ以上がある。[8]
食欲の減退もしくは増加(非定型の特徴を持つ場合)
不眠または過眠(非定型の特徴を持つ場合)
気力の低下、疲労
自尊心の低下、
集中力の低下、決断困難

3)少なくとも2年間以上続き(子供の場合1年以上)、大うつ病ではうまく説明できない。

4)書籍[3]によると、次の項目のうちいくつかに、毎日のように悩まされていると感じたら、気分変調性障害の可能性があるそうです。

自分は人間として、どこか欠けていると思う。
他の人は、人間としてしっかり耐えているのに、自分は弱い人間だと思う。
自分は何をやってもうまくいかない。
自分は何か、なすべき努力を怠っているような気がする。
人が「本当の自分」を知ってしまったら、きっと嫌いになるだろう。
「**」したいと言うのは、わがままなことだと思う。
自分が何かを言って波風を立てるくらいなら、我慢したほうがずっとましだ。
自分の人生がうまくいかないのは、自分が今までちゃんと生きてこなかったらからだ。
人生は苦しい試練の連続であり、それを楽しめるとはとても思えない。
これから先の人生に希望があるとは思えない。

2)非定型の特徴を伴う抑うつ障害

うつ病もしくは持続性抑うつ障害で、次の症状が大半の日に優勢な場合。

1)気分反応性・・・抑うつしているときもあるが、自分にとって好きなこと、楽しいことをしているときは、抑うつ症状が見られない。

2)次の2つ以上に当てはまる。
食欲の減退もしくは増加
過眠(仕事や学校のある日の朝、起きられない。その他の日や時間帯は平気。)
手足など体の一部が鉛のように重い感覚がある
他人に嫌われる、拒絶される感覚に長期間にわたり、敏感

3)不安性の苦痛を伴う抑うつ障害

うつ病もしくは持続性抑うつ障害で、次の2つ以上に当てはまる場合。

1)張りつめた、緊張した感覚
2)落ち着かない
3)心配で集中できない
4)恐怖
5)自分をコントロールできなくなるかもしれない感覚

4)月経前不快気分障害、周産期うつ病

4-1)月経前不快気分障害
月経開始前に症状が現れ、月経終了後に症状が軽快もしくは治まる。
B.感情の不安定性、イライラ・怒り、抑うつ、不安・緊張
C.興味が減る、集中力が減る、倦怠感、食欲の変化、過眠化不眠など

4-2)周産期発症:
妊娠中もしくは出産後4週間以内に、抑うつ症状が始まっている場合です。
マタニティブルー。

いずれも、女性ホルモンの変化が影響します。

5)季節性感情障害(SAD)

冬だけうつの症状が出る冬季うつ病、逆に夏に出るかケースもあるそうです。冬の場合、特に雪国での日照不足が関係していると考えられるケースがあります。
季節性感情障害(SAD)が光と関係しているということの根拠となる観察結果は、次のようです。(本[5]p138参考)
1)発症する頻度は、世界中で日照の少ない地域ほど多い。
2)既にSADになってしまった患者でも、南へ旅行すれば症状が軽快すること。
3)他の治療法では十分効かなかった患者でも、高照度光療法が効く。(参照:セロトニン神経と活性化

光療法の総合サイト

6)(いわゆる)新型うつ病

・最近、書籍などいくつか出版されていますが、診断基準に沿った正式な病名ではなく、俗称です。

新型うつ病の特徴:
比較的若い人に多い。
自分の好きな活動のときは元気になる⇔仕事、学業、プレッシャーの多いことには抑うつになる
疲労感や身体の不調を伴う

ただし、他の書籍に書かれているそのほかの特徴については、疑問な面もあります。
傳田先生の書籍[2]では、新型うつ病には、次の3タイプがあるとしています。

1)ディスチミア型うつ病 2)非定形うつ病 3)発達障害型うつ病
世間では、上記1)2)3)の3タイプが、きちんと区別されずに診断されている面もあるようです。

いずれのタイプも不安を伴いやすく、強迫性障害など、不安障害の病気を併発する人は、ある程度います。

発達障害を抱えていると、社会への適応が難しく、ストレスを抱えやすいことが多いのです。そのため、うつ病などを二次的に併発することも多くなります。

参考

[1]アメリカ精神医学会(APA)[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修]「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(2014年)
[2] 傳田健三「若者の「うつ」」ちくまプリマー新書(2009年)
[3]貝谷久宣 (著, 監修) 「非定型うつ病 パニック障害・社交不安障害 よくわかる最新医学」 主婦の友社 (2009年)

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