4-2.精神療法・心理相談を受けるには

著者:有園正俊 公認心理師

1.精神療法・心理療法・カウンセリングとは

・精神療法・・・医療での用語で、心理学に基づいた治療法です。精神科医が行ったり、医師の指示に基づいて行われる場合に用いられます。

・心理療法・・・精神療法と同様の意味ですが、心理学の世界ではそう呼ばれます。

・カウンセリング・・・医療で精神療法のことをそう呼ぶ場合もあります。しかし、社会では、もっと広い意味で、医療以外にもいろいろな分野で、「何らかの問題に対して行う心理的な援助」として用いられます。

・発達相談・・・発達障害もしくは、その問題が疑われる人と家族向けの相談です。精神科(小児・思春期)、大学付属の心理臨床相談センター、発達障害者支援センターで行っている場合があります。また、地域の児童相談所、保健所などから紹介してもらう方法もあります。

・心理検査(心理テスト)といって、精神症状、性格、考え方、発達、知能(IQ)の状態などの検査を、心理士が行うことがあります。

2.主な精神療法

・認知行動療法
認知療法、行動療法、弁証法的行動療法、スキーマ療法、マインドフルネス・・を含めた総称として、認知行動療法と呼ばれることが多いです。
うつ病、パニック障害、PTSD、統合失調症など、精神科のさまざまな精神の病気、心理的な問題、発達期の療育などで用いられます。

・応用行動分析

・対人関係療法

・来談者(クライエント)中心療法、非指示的精神療法:
患者さんの話すことを、まず聞きます(傾聴)。治療者は、無条件に肯定(支持)し、否定をしたり、意見をしたりしません。共感し理解します。治療者が、患者の話を聞くうちに、患者が自分自身で気づいていける(洞察を得る)ように導いていくものです。

・支持的精神療法:
困難への対処、不安の軽減を目的とし、患者の話を受容的態度で聞き、安心させ、患者の自尊心を高め、支持をします。 助言や説得も必要に応じて行われます。一般に精神科外来で、医師が話を聞く方法も、広い意味での支持療法です。

・精神分析:
フロイトが創始した理論(1886年-)で、無意識の深い欲望と、その抑圧が神経症に関係するとしたもの。100年以上の歴史があるものの、その後、治療効果(エビデンス)が確認されてはおらず、現在では医学的な治療としては普及していません。

3.精神療法はどこで受けられる?

精神療法を行っている施設
1)精神科・心療内科の医療機関
2)民間の心理カウンセリングセンター
3)大学院付属の心理臨床センター

1)医療機関での精神療法

・OCDへの認知行動療法で、健康保険で受けられるところは、とても少ないです。
OCDへの認知行動療法を行っている施設のほとんどは、現状では自由診療です。 週1回30-60分で、1回につき数千-1万円くらいが多い。何回も通うと何万、何十万円になります。

2)3)心理相談センターでの心理療法

・民間のカウンセリングルームや大学院付属の心理臨床センターなどです。心理療法(カウンセリング)、相談、心理検査などを専門に行っている施設です。
・健康保険が利用できません。
・医師が勤務していない施設が多いため、診断・薬物療法は、医療機関で行い、そこの医師と連携して、精神療法のみを行えるところがあります。一般的には、精神科医の主治医に診療情報提供書を書いていただきます。

3.精神療法は誰が行う?

3-1.カウンセリングの資格

・精神療法を行えるのは、トレーニングを受けた精神科医、心理師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士などです。

・心理師(士)の資格は、公認心理師という国家資格、臨床心理士などの民間資格があります。

・日本ではまだ精神科医や心理士が、必ず認知行動療法を学ぶようなシステムになっていないため、それらの資格を持っていても、認知行動療法を十分にできる人は限られます。

認定行動療法士、専門行動療法士という資格を、日本認知・行動療法学会が認定しています。 しかし、この資格をもっていなくても、認知・行動療法はできます。

3-2.検索

臨床心理士に出会うには
臨床心理士のいる相談機関を探すことができます。「サイトをご利用の皆様へ」をお読みの上、利用してください。都道府県、神経症、行動療法、認知行動療法をチェックします。

強迫症/強迫性障害については、当サイト>強迫性障害の案内板>3-2.医療機関・心理施設リスト 強迫性障害 をご覧ください。

4.ピアカウンセリングと精神療法との違い

ピアは、仲間という意味です。ピアカウンセリングは、身体などの障害を抱える人たち同士が、自立生活をするために、お互いに支えあうために始まりました。
身体障害では、同じような障害を抱えている者同士の方が、専門家よりもお互いに理解したり、支えあえる部分もあることがあります。また、精神障害への福祉施設・団体においても、ピアカウンセリングは取り入れられるようになり、そのような団体主催で、精神障害のピアカウンセリング講座も開催されています。
ただし、このような講座は、主に統合失調症、そううつ病、アルコール障害などの疾患を抱えている人の参加が大半で、日常生活で生活障害があり、福祉的な支援・サービスを必要としつつも、できるだけ自立した生活をしたい人を対象としています。
ピアカウンセラーは、病気の診療や医療行為となる精神療法は対象外です。

ピアカウンセラーの目的は、JILのホームページにくわしく書かれています。そこには、「精神的サポート」と「自立のための情報提供」が、2つの大きな目的です。そして、「JILが提唱するピア・カウンセラーは、単なるアドバイザーではありません。当事者のことをもっともよく理解しているのは、その人自身であるという人間信頼、自己信頼にのっとった立場に立ちます。平等に、対等に、力と時間をつかい、自立生活の実現のサポートをします。」と書かれています。

参考

[1]馬場謙一、橘玲子「改訂版 カウンセリング概説」 放送大学教育振興会(2005)

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