1-2.強迫症 強迫性障害(OCD)とは? 特性と鑑別

[1]OCDの特徴

・症状の表れ方が多様で、人によってさまざまです。また、併存疾患の有無によっても異なります。

・多くの患者は、その症状が、自分でもどこか異常だとわかっている部分があります(自我違和性)。しかし、その自覚の程度には差があり、違和感がほとんどない人もいます。

・症状が重いほど、疲れます。自分が望んだ行動によって疲れるのではなく、本人にはある程度不本意なことで労力を消耗させられる思いがします。

強迫的な性格強迫性パーソナリティと、OCDとは区別されます。元々、強迫的な性格が高じてOCDになる割合はそれほど多くはありません。

・元々、強迫性パーソナリティ、自閉症スペクトラム障害を持つ人が二次的にOCDになった場合、発症前と後とで、症状の違いが大きければ、病気だという自覚(病識)を持つ場合があります。しかし、OCDの症状が、元々の性格によるやこだわりのによる行為が高じたタイプでは、自我違和感が乏しい場合もあります。

[2]他の病気との違い

2-1)統合失調症での幻聴や妄想では、頭の中で他の人の声が聞こえる、他の人に見られているように感じらことがありますが、強迫観念では、自分の心の中だけで生じているという自己の一体感は保たれています。
しかし、患者さんの中には、他人とはっきりとは言えないが、人か何かわからない者が命令してきているような頭の中の考えに苦しむ患者さんが、強迫症と診断されていることもあります。その場合、自己の一体感が崩れ、統合失調症などの精神病にならないよう、注意をする必要がある場合があります。

2-2)自閉症スペクトラム障害でのこだわり、感覚過敏と、OCDの区別が難しい場合があります。

2-3)(限局性)恐怖症とOCDの違い
恐怖症は、虫、爬虫類のように特定のものが存在する場合、高所、飛行機、閉所、雷のような実際の状況に対して、強い恐怖、不安が生じ、生活に支障をきたします。
恐怖症でも、虫や爬虫類っぽく見えるものまで、恐怖を感じることはありますが、視界や聴覚のように感覚にとらえたり、その状況に居合わせた場合です。以前、ヘビが通った場所に汚れがついているように思える、すれ違っただけで、もしぶつかって大けがをさせた場合を恐れるとなると、記憶や想像のような思考によって、恐怖がもたらされているので、OCDの強迫観念が疑われます。
また、恐怖症でもOCDでも、恐れるものを回避し、安全かどうかの確認をすることがあります。また、いずれの疾患でも、本人が嫌なことを避けていて、家族が代わりに配慮してあげていると、強迫行為がわかりにくい場合がありますが、それを調べることが鑑別には必要です。

2-4)身体症状が伴うOCD
OCDの症状は、強迫観念と強迫行為ですが、それだけというわけではありません。これらの症状に、身体症状が伴う人います。
例:心臓がドキドキする、息苦しくなる、汗をやたらかく、赤面する、なかなか眠れない、頭痛、腹痛・・・
また、手や肌の洗いすぎで炎症を起こす、トイレを我慢し過ぎて膀胱に異常が出るような二次的な症状が現われる人もいます。

2-5)快楽、好奇心によって繰り返す行為は除く
ギャンブル依存、ゲーム依存、アルコールなどの物質依存、買い物依存、窃盗症のように、快楽的であったり、何かを獲得したくなるような衝動によって、繰り返される行為は、OCDとは区別されます。
OCDでは、嫌な思いや感情をもたらすものを、なくしたい衝動によって行為が行われます。
その区別が難しい例を次に示します。
1)物を拾い集めたり・買いすぎてしまうのが、物を獲得したときに快楽的な感覚が得られるのでしたら、OCDとは言い難く、OCDでは、この機会を逃すと二度変えないのでは、後で後悔するかと思うと買わずにいられないような動機によります。
2)インターネットでの検索や、他人に質問する際も、好奇心や、より良い情報を手に入れたいというような欲求が主であればOCDとは言い難く、不安の解消や後悔をしないようにというような否定的な状況になることを防ぐための行為であればOCD的です。

[3]児童期(18歳以下)で発症した場合

精神と脳の発達に応じて、強迫症状の現れ方が異なります。
例:
1)具体的にばい菌、エイズなどを理屈で意識して心配するのではなく、もっと漠然とし感覚的な衝動のままに強迫行為をします。
2)汚れやシミが、もぞもぞと生き物のように動きそうな気がする、汚れがもわーっと空気を伝わって襲ってくるような気がするというような、感覚的な思い込みが強い。(本当にそう見えるわけ(幻視)ではなく、そのような思いがするだけです)
3)時間を戻そう、なかったことにしよう、ビデオの再生のようにやり直したり、スローにしたり、物理的に不条理な面が強い。

・脳、精神の発達している時期のため、強迫症状が典型的なものではなく、他の精神疾患との区別が難しい場合があります。

・子どもは、言葉で自分の不調を言い表す能力が十分でないことも多く、専門家にとっては診断は難しい場合があります。そのため、2)3)は、本人の言葉の表現によっては、他の病気との鑑別が難しく、誤診される場合もあります。

[4]影響を与える要因

4-1) 原因は何?

・遺伝子が関連しているであろうという説はありますが、詳細はわかっていません。[1]

・状況次第では、多くの人がなりうる病気だと考えられます。
・「OCD患者の1/3~2/3は、何らかの重大な出来事やストレス、例えば、身内の死や出産、人間関係のトラブルなどを発症の契機としている」([2]p14)だそうです。

・精神的・物質的(お金や家事)に自立してない・依存しやすいことが、症状の悪化や治療の進行に影響を与えることがあります。

・子どもの頃の家族との関係(虐待など緊張が強い環境、過度に細かく厳格なしつけ、など)が関係があると考えられるケースもありますが、原因の特定は、困難な面が多いです。

4-2)男女の違い?

患者さんの割合は、男女でほぼ同じです。
ただ、発症する年齢に、男女で差があります。
女性は、思春期、妊娠、出産、更年期のように女性ホルモンが変化する時期にOCDを発症・悪化する人がいます。また、月経の前後に、強迫症状が高じたり、思春期、更年期という女性ホルモンが変化する時期に、強迫症に変化が現れる人もいます。

4-3)有病率と時代・地域による違い

強迫症を生涯で経験する人の割合は1-3%と報告されています。[1]
どの時代や、どこの国・地域でも経験する人がいます。ただし、時代や地域によって、症状の現れ方が異なります。
現代の日本では、洗剤や抗菌グッツなどの商品があふれていて、臭いや除菌への心配をあおる宣伝も多いです。そして、家屋の気密性が増し、土などの自然に触れる機会が減りました。それと共に、社会全体での清潔に対する考えも、昔(例えば、明治時代以前・・)とは変わってきています。また、近頃では、個人情報の流出や、ネットでの操作ミスを過剰に恐れる強迫観念をもつ人もいます。

4-4)脳の障害?

脳の機能の異常としては、主に次の2つの仮説が考えられています。

4-1.セロトニン仮説

脳内の神経伝達物質のセロトニンに作用する薬がある程度効果があることから、セロトニンが関係していると言う説があります。しかし、それだけで説明できるものではなく、セロトニンが一次的な病因ではないらしいとした報告もあります([3]p11)。

4-2.ネットワーク仮説

脳内のいくつかの部位の活動が高まることから、それらを結ぶネットワークの機能障害が考えられています。(参照:OCDと脳、[2])
また、脳画像(MRI、PETなど)を使った研究も多く、脳内のそれらの部位で、活動の高まりが見られると報告されています。
そして、行動療法などの治療によって症状が改善されると、その高まりの部分も改善されるという報告があります。

[5]他の病気・障害の併存と関連

・OCDは、他の精神の病気や障害をあわせ持つ場合も多いです。

・強迫的な症状が見られる精神疾患は、OCD以外にも、いくつかあります。
例:発達障害、社交不安症(対人恐怖)、摂食障害、双極性障害、統合失調症、依存症、強迫性パーソナリティ障害、PTSD・適応障害など。

・強迫スペクトラム障害
強迫に似た症状がある精神疾患をグループとして分類した呼び方です。[1]

それらの病気は、TOPページ>精神科>精神関係の病気の一覧に簡単に解説してあります。

・その関係は、図10のような感じです。 

[6]うんちく・メモ

・スペクトラムというのは、7色の虹の光が、色の境目がなくつながっているように、病気の境目がはきりせず、連続しているという意味です。 その他に、自閉症スペクトラムという用語もります。

参考文献

[1]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)
[2]こころの科学104 強迫 日本評論社2002
[3]ギャビン・アンドリュース他「不安障害の認知行動療法(3)不安障害から回復するための治療者向けガイドと患者さん向けマニュアル」星和書店

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