[1] 原因は何?
・遺伝子が関連しているであろうという説はありますが、詳細はわかっていません。[1]
・状況次第では、多くの人がなりうる病気だと考えられます。
・「OCD患者の1/3~2/3は、何らかの重大な出来事やストレス、例えば、身内の死や出産、人間関係のトラブルなどを発症の契機としている」([2]p14)だそうです。
・精神的・物質的(お金や家事)に自立してない・依存しやすいことが、症状の悪化や治療の進行に影響を与えることがあります。
・子どもの頃の家族との関係(虐待など緊張が強い環境、過度に細かく厳格なしつけ、など)が関係があると考えられるケースもありますが、原因の特定は、困難な面が多いです。
[2]性差と性ホルモン
患者さんの割合は、男女でほぼ同じです。
ただ、発症する年齢に、男女で差があります。
女性は、思春期、妊娠、出産、更年期のように女性ホルモンが変化する時期にOCDを発症・悪化する人がいます。また、月経の前後に、強迫症状が高じたり、思春期、更年期という女性ホルモンが変化する時期に、強迫症に変化が現れる人もいます。
[3]有病率と時代・地域による違い
強迫症を生涯で経験する人の割合は1-3%と報告されています。[1]
どの時代や、どこの国・地域でも経験する人がいます。ただし、時代や地域によって、症状の現れ方が異なります。
現代の日本では、洗剤や抗菌グッツなどの商品があふれていて、臭いや除菌への心配をあおる宣伝も多いです。そして、家屋の気密性が増し、土などの自然に触れる機会が減りました。それと共に、社会全体での清潔に対する考えも、昔(例えば、明治時代以前・・)とは変わってきています。また、近頃では、個人情報の流出や、ネットでの操作ミスを過剰に恐れる強迫観念をもつ人もいます。
[4]脳の障害?
脳の機能の異常としては、主に次の2つの仮説が考えられています。
4-1.セロトニン仮説
脳内の神経伝達物質のセロトニンに作用する薬がある程度効果があることから、セロトニンが関係していると言う説があります。しかし、それだけで説明できるものではなく、セロトニンが一次的な病因ではないらしいという報告もあります([3]p11)。
4-2.ネットワーク仮説
脳内のいくつかの部位の活動が高まることから、それらを結ぶネットワークの機能障害が考えられています。(参照:4-1.OCDと脳、[2])
また、脳画像(MRI、PETなど)を使った研究も多く、脳内のそれらの部位で、活動の高まりが見られると報告されています。
そして、行動療法などの治療によって症状が改善されると、その高まりの部分も改善されるという報告があります。