2-4.認知行動療法によるOCDの分析と評価

認知行動療法は、心理学を用いた治療法です。
日常生活で生じてる問題行動を、本人が生活するのに適した行動に変えていくことを支援して、問題の解決を目指します。[1,2]
うつ病、パニック障害、PTSD、統合失調症など、精神科のさまざまな精神の病気、発達期の療育などで用いられ、いろいろな技法があります。
患者さんと治療者が共同で行います。治療者は強制的なことはしません。
患者さんが、ただ話して、治療者が聞くだけという受身の治療ではありません。具体的に患者さんができそうなことを考えて、取り組んでいきます。

[1]認知行動療法の基本モデル

CBT基本モデル

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)では、患者さんの中の認知、行動、気分・感情、身体と、外からの環境の5つに分けて考えます。 これを基本モデルと言います。

・認知・・・考え、言葉、イメージなど。
・行動・・・主に体を動かすこと。
・感情・・・気持ち。短い言葉で表せる心の動き。
・身体・・・体の生理的な反応。
・環境・・・自分の外の状況、対人関係。

これらはお互いに影響し合っています。

強迫症/強迫性障害(OCD)やうつ病のような精神疾患では、認知、行動、身体、感情、環境の5つの中で何らかの悪循環が生じていると考えます。

この5つの中で、
感情と、身体は、直接、自分でコントロールできません。
環境は、変えられる場合は、限られます。変えられる場合、環境調整と言い、例えば、職場での就業時間、勤務内容などを調整してもらいます。

認知と行動で、変えられる部分を見つけて、働きかけていくので、認知行動療法と言います。

[2]観察と評価(アセスメント)

認知行動療法では、患者さんの症状に関連した状況をさらにくわしく調べます。
このような観察と評価をアセスメント(assessment)と呼びます。

主な調べる項目の例:
基本モデルの内容はどうなっているのか
1日、1週間での生活状況
就学、就労の状況
家族、周囲の人との関係

セルフモニタリング(自己観察)といって、患者さんが自分の状況を観察し、表などに書いて整理することがあります。
心理師、看護師が認知行動療法を行うことがありますが、その場合、主治医からも情報を聞き、連携して行うことが望ましいです。

[3]ケースフォーミュレーションと心理教育

認知行動療法では、アセスメントで調べた結果から患者さんの行動によって、どのような結果が起こっているかというケースフォーミュレーション(行動分析ともいう)をします。[1]

強迫症/強迫性障害(OCD)でのケースフォーミュレーションの例:
①強迫観念を引き起こす場面(トリガー:引き金、強迫症状を引き起こす場面に出会うこと)
例)うっかり汚いと思う場所を通った

②強迫観念が、頭によぎり
目に見えない汚れがついてしまったかもしれないと思う-認知

不安、焦り-感情

緊張して体がこわばる、ドキドキする、触っていないのに触った感覚がする、とても疲れる-身体

③手を、何度も洗う=強迫行為を行う。-行動

一時的な安心-感情


そして、繰り返されて、習慣になります。
強迫症状は、いったん習慣になってしまうと、それを自分でコントロールすることが難しくなります。

この結果を、患者さんと共有し、症状を改善していくためには、どう介入すればいいかを、患者さんと一緒に計画していきます。この段階を、心理教育と言います。

[4]巻き込みを含めたケースフォーミュレーション

強迫症状への巻き込み=患者が不安怒りを減らしたい動機によって、周囲の人の日常生活に変化を及ぼしてしまうこと。

家族が巻き込まれることも、繰り返されると、本人の強迫行為と同様で、本人の苦痛は一時的には減りますが、悪循環となっていきます。
家族の巻き込みが増すと、患者さんの症状も重くなりやすです。
巻き込まれが習慣になってしまうと、家族の方から、それを止めるのが難しくなってしまうことも多いです。

例 本人が確かかどうか不安で、何度見ても治まらないから、家族が代わりに点検して、大丈夫と言ってあげた。それ以降、本人が家族に点検してもらわないではいられなくなった。

強迫観念と強迫行為の関係

[5]強迫症状のチェックと重症度の評価

強迫性障害で、もっともよく使われる評価尺度が、エール・ブラウン強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS*) です。Y-BOCSには、次の1)-2)が含まれます。[3,4]
正しく評価するには、自己記入ではなく、治療者と一緒に記入していくことが基本です。(半構造化面接)

1)症状評価リスト・・・いろいろな強迫の症状が載っているので、該当するものをチャックします。

2)重症度・・・強迫観念、行為について、かかる時間、障害、苦痛、抵抗、コントロールできないとなっている程度、の各5項目ずつ合計10項目の質問に、0~4の5段階で評価します。

10項目の得点を合計し、40点満点の点数で強迫性障害の重症度を評価します。[4]

合計点=重症度 障害の内容
0-7 =病気とはいえない
8-15 = 軽度 苦痛を伴うが必ずしも機能障害は伴わず、他者からの補助を通常必要としないもの。
16-23 = 中等度 苦痛と機能障害の両方をもたらす。
24-31 = 重度 重大な生活機能の障害を引き起こし、他者からかなりの補助を必要とする。通勤、通学をするには、非常につらい。
32-40 = 極度 生活での機能の障害が重い。引きこもり状態の人が多い。

改善前、改善後などの時点で調べると、改善の進行度合いがわかります。

CY-BOCS・・・子ども用。
Y-BOCSⅡ・・・Y-BOCSの次のバージョンですが、まだそれほど使われてはいません。
DY-BOCS・・・強迫症状を次元に分けて評価するもの。これも研究者が使う程度。

*Y-BOCS:Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale エール大学、ブラウン大学

[6]参考

[1]下山晴彦、神村栄一「認知行動療法」2014年、放送大学教育振興会
[2]伊藤絵美「認知療法・認知行動療法カウンセリング」
[3]原田誠一[編]「強迫性障害治療ハンドブック」2006年、金剛出版
[4]Wayne K.Goodman,Lawrence H.Price,Steven A.Rasmussen,et al.The Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale I. Development, Use, and Reliability.Arch Gen Psychiatry. 1989;46(11):1006-1011.
[5]Gail Steketee, Teresa Pigott, “Obsessive Compulsive Disorder: The Latest Assessment and Treatment Strategies”, 2006.Compact Clinicals

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