2-4-1.OCDでのアセスメントと分析

著者:有園正俊 公認心理師

認知行動療法で、アセスメントした結果から、強迫観念と強迫行為の悪循環になっている状況を調べていきます。家族の巻き込みも、その悪循環に影響します。

[1]症状を調べて、分析する

CBT基本モデル
認知行動療法の基本モデル

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)での基本モデルについては、精神科全般>1-3.認知行動療法と対処の基本をご覧ください。

強迫症/強迫性障害(OCD)では、認知、行動、身体、感情、環境の5つの中で何らかの悪循環が生じていると考えます。
OCDでは、どのような強迫観念、強迫行為が起こっているかを聞き、それに伴う感情・苦痛、身体感覚、周囲の人との関係などについて、患者さんから聞いたり、用紙に書いてもらったりなどして調べます。=アセスメント

アセスメントした結果から、患者さんの中でどのような状況になっているかを分析するケースフォーミュレーション(行動分析ともいう)をします。[1]

強迫症/強迫性障害(OCD)でのケースフォーミュレーションの例:
①強迫観念を引き起こす場面(トリガー:引き金、強迫症状を引き起こす場面に出会うこと)
例)うっかり汚いと思う場所を通った

②強迫観念が、頭によぎり
目に見えない汚れがついてしまったかもしれないと思う-認知

不安、焦り-感情

緊張して体がこわばる、ドキドキする、触っていないのに触った感覚がする、とても疲れる-身体

③手を、何度も洗う=強迫行為を行う。-行動

一時的な安心-感情


そして、一時的な安ど感があるので、強迫行為は繰り返されてしまいます。=強化
強迫症状は、いったん習慣になってしまうと、それを、自分で止めたり、コントロールすることが難しくなります。=悪循環

この結果を、患者さんと共有し、症状を改善していくためには、どう介入すればいいかを、患者さんと一緒に計画していきます。この段階を、心理教育と言います。

[2]巻き込みを含めたケースフォーミュレーション

強迫症状への巻き込み=患者が不安怒りを減らしたい動機によって、周囲の人の日常生活に変化を及ぼしてしまうこと。

家族が巻き込まれることも、繰り返されると、本人の強迫行為と同様で、本人の苦痛は一時的には減りますが、悪循環となっていきます。
家族の巻き込みが増すと、患者さんの症状も重くなりやすいです。また、本人の精神症状の治療にも、支障をきたしやすいです。
しかし、巻き込まれが習慣になってしまうと、家族の方から、それを止めるのが難しくなってしまうことも多いです。
すぐには、巻き込みが止められなくても、まずこの仕組みを理解してください。
そして、できるだけ家族への巻き込みを減らす方法を目指すことが、症状の改善にもつながります。

家族への巻き込みとOCDの悪化
強迫症状と巻き込みの関係

参考

[1]下山晴彦、神村栄一「認知行動療法」2014年、放送大学教育振興会

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