2-7.行動療法3 症状の変化と過ごし方

著者:有園正俊 公認心理師

[1]曝露反応妨害による症状の変化

行動療法による行動、思考、感情の変化

30分、1時間・・というのは、1回の行動療法の中での時間です。
また、1日、1週間、1ヶ月、3ヶ月・・というのは、カウンセリングや宿題(ホームワーク)を何回も重ねたことによる変化です。
ただし、これは一般的な場合で、例外もあります。

症状や強迫の対象が複数ある人が多いのですが、その対象ごとに課題を設定し、症状を一つずつはずしていくので、全部はずすには月日がかかります。

曝露反応妨害の課題を行うと、その度ごとに、今までできなかったことができるようになり、楽になることが増えていきます。
最初の頃は、できることが増えて、改善の手ごたえ、達成感が感じやすいです。

その後、今まで「汚い!」と感じてい感情や考え方(認知)が、行動療法の回数を重ねることで、それに遅れてですが、次第に和らいできます。
ケースによりますが、数ヵ月後のときもあるでしょうし、いつのまにか気がついたら平気になっていたという場合もあります。

本[1]には、次の1.-6.のように書かれています。

1.衝動や思考は、多少は自分でコントロールできても、あらゆるときにコントロールし切れる人は一人もいない。

2.行動だけが、常にコントロール可能である。

3.行動を変えれば、思考(観念・認知)と感情も変化する。(青い→の部分)常にコントロールできるとは限らない感情や思考をコントロールしようとする必要はない。

4.もし強い意欲があり、十分な支持と激励が得られるのならば、強迫行為に抵抗できなかった患者を、著者はこれまでに見たことがない。

5.曝露と反応妨害の実践を続ければ、恐れと強迫行為は、ほとんどの患者で減少する。ただし、人によって、減少の速度は異なる。

6.世界における過去30年の調査によると、行動療法によりOCD患者の約2/3が、症状をコントロールでき、効果が確認された。

「恐るべき状況のほんの一部と向き合うだけでは、永遠に続く成功は得られません。すべての恐るべき状況をうまく操る方法を学ぶことが、全快するために欠かせないことです。」[2]p231


[2]日々の過ごし方

1)波があっても当たり前

昨日より、うまく行かないことは、あって当然です。改善が遅々としたり、時には後退することもあります。そういう波があっても、続けます。
その状況もあるがまま受け入れ、七転び八起きです。
曝露反応妨害法は、もし失敗しても、何度でも成功するまでやり直せばいいのです。
翌日は、また新たな気持ち、リセットして、再スタートします。
課題の設定や、症状の理解、評価の方法にずれがあったかもしれないので、治療者とともに検証することもありえます。

2)適度な休憩

認知行動療法の宿題のような取組をする以外の時間は、強迫になりそうなものから離れ、他のことに注意を向け、休む時間を作ります。疲れ過ぎは、よくありません。

3)成功体験を、徐々蓄積していく

1日1日の好不調にとらわらないで、数ヶ月、半年、1年という単位で、ながめてみてください。
糸がこんがらがったのを、ほどくとき、ほどけた部分を大事にして、徐々にそれを長くしていくのに似ています。まだほどけていない部分に、目を向けてとらわれるのではなく、例えわずかでも、今までできた部分を大事にします。
あまり先のことを心配するよりも、「今」に目を向けます

参考

[1]リー・ベアー「強迫性障害からの脱出」 晶文社
[2]エドナ・B・フォア博士&リード・ウィルソン博士(片山奈緒美訳)「強迫性障害を自宅で治そう!」VOICE