4-6.電源プラグの発火恐怖とほこり

著者:有園正俊

強迫症/強迫性障害(OCD)の中には、外出前の戸締りの際に、電源コンセントの差込プラグを必ず抜くという人がいます。また、電源のプラグにほこりが付いていないか、マメに掃除したり、確認する人もいます。理由は、火事が怖いからだと言います。
しかし、本当は、どうなのでしょうか?著者は、電気電子工学科出身なので、科学的に解説してみました。

電源の機器の名称:
コンセント・・・壁に付いている2つの穴、
差込プラグ(もしくは差し込み、プラグ)・・・電気機具のコードの先に2つの金属の棒が突き出ているもの。

1)強迫観念の例
・ドライヤー、電気ストーブ、アイロンなど、熱を扱う電気器具のスイッチがつけっぱなしなら、火事にならないかという思いが、強迫観念になっている人がいます。そのためには、スイッチを切るだけでなく、プラグも抜いた方がより安心できると考えるわけです。
・コンセントとプラグに、ほこりがつくと、火事になると心配する人もいます。しかし、OCDのためにプラグが気になる人でも、通常、外出前に、冷蔵庫のプラグまでは抜いたりしません。

2)恐怖のきっかけ
コンセント・プラグ+ほこりが、火事を連想させるきっかけとなったのは、消防関係のニュースやホームページで、そういう映像を見たからという話を聞きます。
その際に、「ほこりがたまっているのは危険」「こまめにほこりを取り除きましょう」などと誤った情報を伝えてしまうと、OCDの患者さんの中には、危機感を過剰に募らせてしまい、ほこり取りの頻度が過剰になってしまうことがあるのです。
しかし、ほとんどの家庭では、電源コンセントのうち、何カ所かは、掃除しにくい場所にあって、ほこりがついたままの場所があるものです。

3)トラッキング現象
電源コンセントで、起こりえるのは、トラッキング現象による火災です。世界中に、何百億?何兆?の電源があるか知りませんが、こういう現象が起こるのは、非常に稀です。
ほこりも、湿気も、どこにでもあるものですが、電源コンセントで発火するには、その2つの条件だけで足りません。通常の綿ぼこりは、絶縁体で、電気を通さないためです。

検索したら、新潟県のHP「電気火災を防ごう」に、解説が載っていましたが、これは比較的正確です。

発火するためには、金属片のようないくらか電気を通す物質が、ほこりに適度に混ざっていて、しかも、スパークできるような絶妙な抵抗・電流に偶然になる必要がある。その部分で、電気が流れ過ぎても、瞬間的にショートしてしまい、発火にならないことも考えられます。そのため、発火するには、近くに燃えやすい物質があって、ショートのスパークが燃え移る必要があります。
これを人工的に起こすのは、簡単ではなく、実験だとアンモニウム水溶液などの電解液を用いて、スパークが起きやすくしているそうです。
しかし、電源部分の装置が古く、劣化して、電線や装置の金属が粉々になって、ほこりに混ざるようになると、以上の条件に近づいてしまう場合があります。

4)本当に注意すべき範囲
以上から、注意した方がいいのは、主に次だと考えられます。
①電源プラグやコードが、壊れていたり、古くなって劣化している機器は使わない。(コードやプラグが、ひび割れているなど)
②工場のように、金属の粉などの導体が、ほこりに混ざりやすい場所の電源コンセントは、注意した方がいい。
③コンセントに、プラグをしっかり刺して、その間の隙間は、なるべく作らない。
(これは、火災予防というより、電気機器自体への影響を防ぐためです)

このように本来、警戒して、対処すべき範囲が、OCDになると、広がってしまうのが特徴です。