著者:有園正俊 公認心理師
強迫症/強迫性障害(OCD)のような精神疾患についての診断基準には、次の2つが用いられます。
・DSM-5(Diagnostic Statistical Manual of Mental Disorders)[1]
アメリカ精神医学会(APA:American Psychiatric Association)による診断基準です。DSMは、世界保健機関(WHO)の疾病分類(ICD)とともに、世界中で、利用されています。
・ICD-10(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)
世界保健機関(WHO)が作成した「疾病及び関連保健問題の国際統計分類です。
DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
A.強迫観念,強迫行為,またはその両方の存在
強迫観念は以下の(1)と(2)によって定義される:
(1)繰り返される持続的な思考,衝動,またはイメージで,それは障害中の一時期には侵人的で不適切なものとして体験されており,たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる.
(2)その人はその思考,衝動,またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり,または何か他の思考や行動(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる.
強迫行為は以下の(1)と(2)によって定義される:
(1)繰り返しの行動(例:手を洗う,順番に並べる,確認する)または心の中の行為(例:祈る, 数える,声を出さすに言葉を繰り返す)であり,その人は強迫観念に対応して,または厳密に 適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている,
(2)その行動または心の中の行為は,不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること,または何か 恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている.しかしその行動または心の中の行為は, それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたす,または明らかに過剰である. 注:幼い子どもはこれらの行動や心の中の行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない.
B.強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける),または臨床的に意味のある苦痛,または社会的,職業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている.
C.その障害は,物質(例:乱用薬物,医薬品)または他の医学的疾患の直接的な生理学的作用によるものではない.
D.その障害は他の精神疾患の症状ではうまく説明できない
(例:全般不安症における過剰な心配,醜形恐怖症における容貌へのこだわり,ためこみ症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ,抜毛症における抜毛,皮膚むしり症における皮膚むしり,常同運動症における常同症,摂 食障害における習慣的な食行動,物質関連障害および嗜癖性障害群における物質やギャンブルヘの 没頭,病気不安症における疾病をもつことへのこだわり,パラフィリア障害群における性的衝動や 性的空想,秩序破壊的・衝動制御・素行症群における衝動,うつ病における罪悪感の反別,統合失 調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群における思考吹人や妄想的なこだわり,自閉スベ クトラム症における反復的な行動様式).
・該当すれば特定せよ
病識が十分または概ね十分:
その人は強迫症の信念がまったく,またはおそらく正しくない,あるいは正しいかもしれないし,正しくないかもしれないと認識している.
病識が不十分:その人は強迫症の信念がおそらく正しいと思っている.
病識が欠如した・妄想的な信念を伴う:その人は強迫症の信念は正しいと完全に確信している.
・該当すれば特定せよ
チック関連:その人はチック症の現在症ないし既往歴がある.
[1]American Psychiatric Association[著]、日本精神神経学会[日本語版用語監修] 、2014年、「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」医学書院
ICD-10の分類の構成(基本分類表)
第Ⅴ章 精神及び行動の障害>神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F40-F48)
F42 強迫性障害<強迫神経症>
F42.0 主として強迫思考又は反復思考
F42.1 主として強迫行為[強迫儀式]
F42.2 混合性強迫思考及び強迫行為
F42.8 その他の強迫性障害
F42.9 強迫性障害,詳細不明