5-2.OCDの認知療法

・認知療法は、元はうつ病の治療として開発され、抑うつ、ストレス、対人関係などの改善で、よく用いられます。それを強迫症/強迫性障害(OCD)で用いることが、長年、研究されてきました。[1]
・ガイドライン[2]で想定しているのは、行動療法(曝露反応妨害)に、次のような認知療法の技法を組み合わせたものです。
一般的なOCDでは、行動療法が中心であり、認知への働きかけは、その補助程度に用いることができます。([3]Grayson2003)
・日本では、OCDの治療で、認知療法の技法を用いているところが、どの程度あるかわからないのですが、参考までに紹介します。

[1]認知療法のしくみ

認知行動療法の基本モデル(参照:2-4.認知行動療法によるOCDの分析と評価)では、思考-行動-感情-身体の関係を調べます。

認知療法(CT)では、
1)強迫を引き起こす出来事(トリガー)に出会う。

2)侵入的な考えが思い浮かびが生じ、それを自分で悪いことだと、解釈します。(強迫観念)そして、不快な感情がわきます。

3)その反応として、強迫行為という行動をします。
と考えます。(参考[1])

しかし、強迫観念は、どこまでが正常な判断で、どこからが過剰な考えか、自分では気づきにくいです。

・そこで、認知療法では、別の見方をしてみることで、強迫観念への異常さへの気づきを促します。その結果を下記の行動実験のような実際の行動に反映させて、効果を確認します。

・OCDの場合、考え方や解釈の偏りに気付いただけでは、症状が変って行きにくいので、それを行動に移すことが大事です。
・ただし、標準的な曝露反応妨害に、うつ病への認知療法的なアプローチを加えても、OCDへの治療成績は向上しません。[4]p54

[2]方法

次は、本人が思考のパターンに気づくための技法です。[2]

2-1)強迫観念、もしくはいやな気分のときの考えを拾う。

「もしかしたら***なんじゃないか」「このタイミングを逃したら、二度と確認でずに、後で後悔するのではないか?」など、頭によぎった考えが、強迫観念なのか気づくことが大事です。それに気づくことが、悪循環に巻き込まれるのことを防ぐ一歩になります。
他の人はしないような考え、合理的ではない考えなら、強迫観念の可能性があります。
また、うつ症状などがあるときは、自分が嫌な感じがするときに、頭によぎった考えを拾い、紙に書き出します。

記録紙には、そのときの状況、感情、SUDなども書くといいのです。

2-2)考えの検証

その考えが、適切か、いろいろな角度から考えてみます。

①ソクラテス質問法
今までの自分とは、異なった視点からの質問、討論によって、矛盾を引き出していく方法。

質問例:
・それ(例えば、今までの強迫行為)をすることで、どのような長所があるのか?
・それをすることで、どのような短所があるのか?
・他の人が同じ状況なら、どうすると思うか?
・強迫行為をしないことで、どんな悪いことがあるか?
・このように考える、行うことの根拠は何か?科学的か?
・以前(病気になる前)は、それに対し、どのようにしていたか?
・もし友人なら、自分と同じ立場になったら、何と言ってあげたいか?

②下向き矢印法
自分の考えについて、上記のような質問していくときに、紙に思考を書いて、そこから下の行へ、矢印を書いて、回答を書き、さらに質問をして、矢印を書いてということを繰り返していきます。 下に行くに従って、より深いレベルの考えのパターンや信念を調べられます。

③行動実験
信念となっている仮説について、実際の行動で本当かどうか実験をしてみます。
例えば、「もし気がつかないうつに、何かが貼りついていて、なくしてしまうのではないか?」という強迫観念がよぎったら、そのようなことが実際に起こりうるか、実際に貼ってみたり、実験をしてみます。

④比ゆ・たとえ話
患者とのコミュニケーションや理解をしやすくすために用いることがあります。

以上の方法を使って、出てきた考えを、この場合、どれが適当か、合理的かを整理していきます。この段階では、その考えに100%確信を持つ必要はありません。何となくわかるけれど、まだ強迫の衝動には勝てないということもよくあります。

2-3)行動

そのテーマについて、行動療法を行います。まだ中途半端な確信でも、それはあるがまま放置して、行動から変えていきます。

それぞれの場面で、不快な感情(SUD)、確信度、などを、点数で表して、その変化を調べます。

[3]考え方の癖のパターン

これは、OCDに限らず、他の病気の患者さんや一般の人でもありうるパターンです。[5](本によって、いろいろな訳語があります。)

1. 根拠のない決め付け・結論の飛躍・・・証拠が十分でないのに、思いつきを信じ込む。例:しばらく友人から連絡がないだけで嫌われたと思い込む。

2.過度の一般化・・・1回だけのことがら、思い込みにとらわれ、全部そうだと決めこんでいる。
例: 血液が苦手だと、それに似た色は全部そうかもしれないと思う。

3.選択的な抽出(心にフィルター)、部分的焦点付け・・・ ささいな欠点にとらわれて、他の事柄、全体像が目に入らない。

4.白黒思考(すべてかゼロか、all or nothing)・・・白と黒の中間であるグレーの判断ができず、どちらかに極端な判断に偏る。

5.過大評価と過小評価、誇張と矮小化・・・自分の短所や失敗を過大に考え,逆に長所や成功したことを過小評価する。

6. ねばならない・すべき・・・それ程の必要はないのに 「…すべきである」「…しなければならない」と考える。

7.マイナス思考・・・単にネガティブになるだけでなく、なんでもないことや、成果、成功に対しても割り引いて評価してしまったり、良い出来事を無視したり、悪い出来事にすり替えてしまう。

8.自己関連付け・・・他の要因が関連していても、自分がその原因だと考える。普通の人は、その原因に関連しているとは考えないものまで、自分に関連付けて信じてしまう。

9. 情緒的関連付け・・・そのときの自分の感情にもとづいて、現実を判断をしてしまう。例)汚れた感じがするから、汚れていると思い込んでしまう。

ただし、伊藤先生の本[6]p114によると、そのひずみを矯正するのではなく、「さらに別の思考を足していって認知の幅が広がったり、認知的な柔軟性が高まれば、結果的に自動思考の確信度は低まるわけで、それでよいのではないかと思います。」です。

[4]参考

[1]Gail S.Steketee Sabine, Ph.D. Wilhelm, Cognitive Therapy for Obsessive-Compulsive Disorder: A Guide for Professionals;New Harbinger Pubns Inc; (2006)
[2]John S. March (著), Daniel Carpenter (著), Allen Frances (著), David A. Kahn (著), 大野 裕 (翻訳) 「エキスパートコンセンサスガイドライン 強迫性障害(OCD)の治療」ライフサイエンス
[3]Lee Fitzgibbsons,Ph.D.,and Cherry Pedrick,RN, Helping Your Child with OCD,2003,p56
[4]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)
[5]石丸径一郎「認知行動療法 11認知療法」放送大学教育振興会2014
[6]代田剛嗣「認知行動理論における強迫性障害の信念について」2006

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