5-5.微小な物質はどこにでもある

著者:有園正俊 公認心理師

汚れが肉眼で見える量であったり、汚染物質が環境基準を超えていれば、誰もが嫌ですし、不安になります。しかし、強迫性障害(OCD)で気になる人は、汚れが目に見えないで実際に付いているかどうかもわからない量、汚染物質が環境基準よりはるかに少ない量でも、付いていることを想像して、心配します。

しかし、空気中には、ありとあらゆる小さな物質(気体、液体、固体)が含まれています。物質は、ある程度以上、小さくなってしまうと、風に舞ってしまい、小さいものほど、空気中に漂ったままになるためです。その大きさは、肉眼で見えるほどの細かいゴミ・ほこりから、肉眼では見えないものまで様々です。

主な微小物質

動物(虫、ダニを含む)の細胞、分泌物の破片、死骸の残骸、フン、細菌、ウィルス、
植物細胞の残骸、花粉、繊維くず、カビ、たばこの煙粒子
砂塵、土、火山灰、黄砂
工場などから排出される物質、自動車の排出ガス
金属、無機質(塩など)、炭化物質、有機物質、イオン成分
水(湿気)などの液体
気体(窒素、酸素・・・)

つまり、排泄物も、ばい菌も、目に見えない粒は、空気中やあらゆる物の表面に付いています。地球の大気圏外や、人工的に無菌室を作らない限り、存在します。

そして、私たちは、常にそういう物質を呼吸で吸っているのです。

外の空気中にある物質は、室内にもあって当然です。ただ、含まれる物質の割合が異なります。

室内塵(ハウスダスト)・・・室内に浮遊する空気中の目にはほとんど見えない微粒子。室内のほこりやダニのカスなどが、外よりもいくらか増えます。

微粒子の大きさ(参考サイト:下記)

実際の物質(汚れ)は原形を留めるのは難しい

・目に見えない物質は、さまざまなものが含まれているため、空気中に放出された後は、他の物質と混ざり合い、その物質だと特定することは難しくなります。

・生物の死がいや排泄物は、やがて乾燥したり、濡れたります。路上の物質は、人が踏んだり、風雨にさらされます。そのため、実際には、原形をとどめない姿に壊れてしまいます。

・細菌は、体の外に放出されると、そう長くは生きられません。体内にいたときのような温度、湿度、栄養が保たれた過ごしやすい環境ではなくなってしまうためです。ウィルスは、細胞ではないので、死ではないのですが、動物の細胞に寄生しないと、その機能が発揮できなくなります。

OCD患者さんのとらえ方の特性

・OCDで汚染、不潔の強迫観念がある人は、自分の気になる物質(血液、排泄物、ツバ・・・)に注目します。それらは、肉眼で見えないレベルの大きさでも、患者さんの頭の中では、その小さな粒があるように思えます。しかし、実際は、上記の理由で、他の物質に混ざって、判別できないような存在になっています。


しかし、OCD患者さんの強迫観念では、恐怖や不安や、身体の感覚が先だって、考えが現実離れしてしまいます。そのため、ついそれをなくしたい衝動にかられます。
しかし、それは、患者さんの頭の中で起きていることです。実際の危険性があるわけではありません。
たとえば、4日前に鳥のフンが落ちていた場所がったとします。4日たって、もう見た目には原形を留めず、既に多くの人が踏んだり、風雨にさらされ、掃除されているかもしれませんが、OCDの人には4日前に見たという記憶が残っていて、気になることがあります。

OCD患者さんには、汚い場面を見なければ、気にならなかったのに、見てしまったために、気になるという人は多いです。

記憶と、実際との違いに気付いてほしいと思います。
OCDは、このような錯覚を使って、患者さんにもっともらしく信用させてしまう詐欺師のようなものです。

参考

篠原直秀「新型コロナウイルスの感染対策に有用な室内環境に関連する研究事例の紹介(第一版)
室内環境学会
株式会社 東邦微生物病研究所「細菌とウイルスとの違い?
生活家電.com「空気中 浮遊物大きさくらべ バイ菌とPM2.5はどちらが大きい?

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