1-5.病者の役割

アメリカの社会学者タルコット・パーソンズが提唱した病者の役割(Sick role : Wikipedia)という考え方を日本語に訳して紹介します。 [5]
病者というのは、患者さんのことです。身体の病気だけでなく、精神疾患でも当てはまります。

権利
①病者は通常の社会的な役割を免除される

――病気のために、仕事や学校を休むことが許されるということです。
そのため、社会的には学校や仕事を休む場合には、病気かどうか理由を定かにするといいのです。不登校、休職、ひきこもりでも、病気が関係していると思われる場合、医師の診断を受けておくことが望ましいです。しかし、深刻ないじめのような危険にさらされていたり、自分の状態を言葉で説明するのが難しい場合も考えられます。

②病者は、病気の状態について責任を負わない

――(どのような病気であれ)病気は、本人が好きでなったものではなく、コントロールが難しいこともあるので、周囲の人も責めるべきではありません。

③病者は治療・支援を受ける権利がある

―――医療やリハビリテーションを利用する権利があります。その権利を支援するために、保険や福祉の制度があります。

義務
④病者は、回復に努めるべきである

――疾患によっては、専門治療を受けることや回復が難しい場合もあります。しかし、その人の状態・状況に応じて、悪化を防ぐ、できるだけ支障を減らすように努めることが役割です。

⑤病者は技術的に有効な援助を探し求め、医療の専門家に協力すべきである

――現代では、インターネットが普及し、専門家を探す手段が広がりました。

解説

上記は、家族の中でも当てはめることができます。
病気が重いときは、思うように動けないときもありますが、病状に応じた治療、療養、リハビリテーションに努めることが患者さんの役割になります。
支援してくれる家族は、自分のために使えたかもしれない時間、お金、労力を一部、病気の人のために費やしてくれているわけです。そのため、患者さんは、1日の中で、自分の役割である療養やリハビリの時間をもつことが望ましいです。それが済んだら、趣味の活動をするようにしないと、支援する人の負担に対し、不公平になってしまいます。
また、患者さんの中には、自宅での療養だけでなく、外出や歩行がリハビリテーションが役割となる人もいます。外見では病状がわかりにくい人もいるので、外でばったり誰かに会ったら、どう思われるかを気にする人がいるかと思いますが、リハビリが役割であるのなら、遠慮することはありません。