5.日光と光療法

1)あらまし

・目が、昼の光を感じることで、感情や精神の働きにも影響を与えます。
・うつ病、季節性感情障害に、日光が十分でないことが関係していると考えられ、光療法が有効であることが確認されています。
・強迫症/強迫性障害(OCD)の要因はよくわかっていませんが、OCDの患者さんに、昼夜逆転、日照の乏しい生活、閉じこもりがちであったことの経験があるかどうかを聞くと、発症の前後に、そのような経験をした人が非常に多いです。

対処のポイント:
昼に、外に出るか、カーテンを開けて窓のすぐそばで、外の景色を見ることが必要と考えられます。ベランダや玄関先でも、室内にこもっているよりは、ましです。
・曇りや雨の日でも、外の方が明るいです。
・太陽を直接見るわけではありません。屋外の景色を見ることで、太陽光を感じます。)

2)太陽光と照度

目が覚めて起きた後、太陽光が目の網膜に入ることで、脳の体内時計をリセットします。セロトニンは、24時間の概日リズムに関わっていることは、わかっています。[1]
これによって、体全体が睡眠から、日中活動の状態に切り替わります。脳神経でのセロトニン神経が活性化し、メラトニンの働きが減ると考えられます。(cf.6.セロトニンと活性化

朝~昼に、目の網膜が、光の明るさを感じることで、脳神経での反応が切り替わると考えられ、その明るさの度合いを測るために照度が用いられます。
この反応が正常に行われるには、通常の室内の照明では、照度が足りません。

屋外の照度[2]
快晴の青空 100,000ルクス
薄曇り、雲の多い晴天 50,000ルクス
曇り 5,000~30,000ルクス
雷雨・雪で暗い屋外 約2,000-5,000ルクス
室内の照度[3]
室内の窓際から曇り空を見る ~約5,000ルクス
会議室、大型店の店内、学校の実験実習室 500ルクス以上(JIS照明基準)
学校の教室 300ルクス以上(JIS照明基準)

・うつ病、季節性感情障害(SAD、俗称:冬季うつ病)に対し、光療法を用いることがあります。

1)「季節性感情障害(冬季うつ病、SAD)でのへの光療法では、2,500ルクスの照明ならば2時間、10,000ルクスならば30分間、浴びることが必要だそうです。」[4,6]

コクラン(*)報告によると、2,3)だそうです。
2)「非季節性のうつ病に対する光療法の有効性は中等度から高い効果がある。短期間の治療並びに朝に光療法を用いること、また睡眠遮断反応者では睡眠遮断法と併用することで、治療反応についてもっとも効果が認められると考えられる。」[5]
3)季節性感情障害については「エビデンスの質は非常に低かったため、光線療法が冬期うつ病の予防に効果的かどうか結論を出すことはできない。」だそうです。[6]

光療法が有効なことは、明らかなのですが、それがセロトニン神経に関連しているということは、間接的にしか証明できません。[7]

患者さんなどの体験:

・ 私自身が約30年前にOCDを発症した前後の日記でも、自宅から出ない日々が多く(仕事も家でしていた)、夜型の生活で、部屋の雨戸を開けることも減り、窓から光を取り入れない日が続いていたので、OCDの悪化に関連したのではと思います。

参考文献

[1]理化学研究所、科学技術振興機構「睡眠・覚醒機能と24時間リズムをセロトニンが束ねる-睡眠・覚醒のサーカディアンリズム形成機構を神経活動レベルで解明-」2012年
[2]松浦邦男「建築工学Ⅰ」朝倉書店
[3]JIS照明基準
[4]Tam EM, Lam RW, Levitt AJ. Treatment of seasonal affective disorder: a review. Canadian Journal of Psychiatry 1995;40(8):457‐66
[5]Cochrane「非季節性うつ病に対する光療法」2004
[6]Cochrane「冬期うつ病に対する光線療法」2019
[7]Simon N. Young. How to increase serotonin in the human brain without drugs. J Psychiatry Neurosci. 2007 Nov; 32(6): 394–399.
*Cochrane(コクラン)・・・治療法の科学的根拠(エビデンス)を検証する世界規模の専門家のネットワーク。

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