2-1.OCDのとらえ方と治療動機

強迫症/強迫性障害(OCD)という病気に向き合っていくためのステップです。
ただし、

・「もし、深刻な症状に苦しんでいたり、もっと恐れる出来事が現実化してしまうと信じ込んでいたり、儀式行動や強迫観念に1日2時間以上もとらわれているのなら、OCDにくわしい専門家の指導を仰ぐことをおすすめします。」[1]p113

・英語の本([2]p1)には、「OCDの人たちの80%割は、支援なしでは改善しないことがわかっている。つまり、まれだが、OCD症状が独力で消失していく」と書かれています。

・独力での限界を感じたり、現在の治療がなかなか進まない場合、OCDによりくわしい専門家を探す方法が考えられます。
OCDは、適切な治療によって、3カ月から2,3年でかなり改善する人が、たくさんいます。

目次

[1]動機と優先順位
[2]強迫か普通かわからない
[3]感覚的と言語・理屈的なタイプ
[4]強迫観念はいじらない
[5]脳が悪いプログラムにはまる病気
[6]家族との関係

[1]動機と優先順位

自分の問題に向き合うことが大事。
これも曝露の一歩です。
勇気もいります。

改善のためには、必要なものは何でしょう?
改善が進まない人は、必要なものをよりも、嫌なことを避ける消去法で、選択していることがあります。
改善できた人は、次の項目(全部とは限らない)の優先順位が高いです。

1)動機・・・自分や大事な人がどうなりたいか?を、紙に書いてみます。
その一方で、治療に踏み出すことをためらう気持ちもあれば、それも書いて、比べてみます。

2)時間・・・OCDの治療に取り組む時間を、他のことよりできるだけ優先してください。

3)お金・・・専門家に頼むには、ある程度費用がかかります。認知行動療法は、健康保険が効かない場合がほとんどです。少なくとも10回、3ヶ月以上かかるので、薬物療法を含めて、通院に合計10ー30万円は少なくともかかります。

次に、費用対効果を考えます。
OCDが改善すれば、働ける能力がある人の場合、仕事に就ければ、元を返すことができます。問題なのは、現状では適切な治療ができる治療者を探すのが難しいため、何軒も専門家を訪れることでも、費用が掛かってしまうケースがあることです。

自分で働いていない場合、家族がいろいろな費用を負担してくれているはずです。
生活費、住居・水道光熱費、インターネットなどの通信費。
学校に通っている、休学している人なら、その学費です。そのような出費が、OCDによって、続くことを考えてみてください。
特に、お金を負担する家族の側に立って考えることが大事です。また、これまでに家族が援助してくれていた金額は、いつ家族に返済するつもりでしょうか?家族には、お金だけでなく、ストレスもかかる場合があります。
そのようなOCDのためにかかる費用と、治療にかかる費用とを比べてみてください。

4)心理・・・プライド、はずかしさ、世間体などが優先してしまい、なかなか治療に踏み出せない人もいます。このような思いがあっても、OCDの改善という行動に踏み出すことも、曝露の一歩です。

[2]強迫か普通かわからない

1)自分の抱えている問題が、症状かどうか、その境界がわからなくなることも、OCDの特性です。
一般的には、強迫かどうか判断で迷っているときに、他の人や病気になる前の自分なら、そのままにして放っておけても、今は放っておけないなら、強迫症状であると考えられます。

2)強迫行為をしていると、「普通のやり方がわからない」という人はよくいます。特に、OCDを長年抱えていると、無理もない話です。

普通の人のやり方は、通常、様々です。潔癖な人も、雑な人もいます。

やり方が普通かどうかというより、強迫行為という症状かどうかです。

症状といえるのは、本人もしくは周囲の人が苦痛を感じる、生活に支障をきたしている、強迫行為の加減やいつ終えたらいいかという感覚もわかりにくくなっている場合です。

病気になる前の自分は、特に意識していなかったこと、言葉であえて方法を考えていなかったことが、強迫行為になるので、普通の方法がどうであったか考えても、言葉ではわからないことが多いのです。

3)感じ方が敏感となり、現実と混同しやすくなる(感覚過剰反応:sensory over responsivity:SOR)
例:汚れた場所にさわってはいないのに、さわったように感じる。
大事なものを持っていなかったのに、持っていたように感じる。
自分の注意が他にそれた間に、何か悪いことが起こったかもしれないと感じる。

4)小さなことまで正体が気になる
例:
・服、持ち物、商品についたわずかな点まで、強迫的に変なものでないか、正体が気になって、見過ごせなくなります。
・車の運転や他人とすれ違ったときに、ちょっとした違和感が、なんであったのか、もしかしたら重大なミスでなかったか気になります。


[3]感覚的と言語・理屈的なタイプ

強迫観念は、次のタイプに分けることができます。

1)感覚や感情に左右されやすいタイプ:
例:
・物事の順番、位置、左右対称などにこだわる。
・日常のささいなことでも、細かいタイミング、自分の姿勢の違いで悪いことが起きると思ったり、不快で放置することが難しい。
・理屈ではないが、嫌な感じがすると、やり直したくなってしまう。
・以前は気にしなかった音や、体の中の違和感が気になってしかたがない。


2)言葉で理屈で考えたり、レッテルを貼るタイプ:
例:
・汚いものを、言葉で分類する。
例えば、外は汚い、地面は汚いと分類すると、少しでもそれらに触れたものまで、汚くなってしまい。ちょっとぐらいならいいやという中間の判断がなくなっていきます。
・頭の中で、大丈夫かどうか理屈で考えますが、どう考えても100%大丈夫とは言い切れなくて、強迫行為をしたくなってしまいます。

[4]強迫観念はいじらない

1)強迫観念は、温泉で湧くお湯のように、自然にわきます。

自然にわくお湯にふたをすることが無理です。それと同じように、強迫観念をなくそうとすると、かえって思い浮かぶ頻度が増し、気になってしまいます。[3]

強迫観念湧く

強迫観念を真に受けて、「どうしよう」「何とかしなきゃ」という衝動のままに行動してしまうと、強迫の思うつぼです。

強迫観念の「もし・・・したらどうしよう」などの嫌な感情をもたらす考えそのままにして、しばらく共存していきます。
そして、下図のように、自分の意識のうちの、自分でもわかっている部分を大事にします。

とらわれ思考

強迫観念を真に受けず、受け流せられば理想的です。

「心配している自分に気づいたら、ちょっと立ち止まって、こんな思いにとらわれていても大丈夫なのだと、自分に言い聞かせてください。」[1]p137

・・・すぐに反応したり、行為をしたりせず、一呼吸置く感じです。

しかし、受け流すというのは、OCDが重度が重くなると難しい人も多いはずです。

受け流せないときは、治療(薬物療法、行動療法・認知行動療法)が必要になります。


[5]脳が悪いプログラムにはまる病気

強迫症状であるならば、強迫症/強迫性障害という病気によって苦痛や支障がもたらされているのです。
OCDは、脳の病気で、強迫症状にとらわれているときは、脳の一部が過剰に働いていたり、敏感に感じやすかったりします。(参照:OCDと脳

脳の警報機が火事でもないのに鳴っているようなもの!
これは強迫観念による過剰な警報なのです。

しかし、OCDの患者さんにとっては、どこからが過剰な警報なのか、その境界がわかりにくい!
強迫は、自分の感情と体の反応(緊張など)が伴うため、もっともらしく感じてしいます。OCDは、人をだますのがうまい、詐欺師のようなものだからです。
だから、念のために強迫行為をしてしまう。


強迫行為が増える→OCDに支配される
自分の意思に反して、症状に費やされる時間、場所が増えます。

脳が、そのようなプログラムに陥ってしまっているみたいなこと。

外在化(がいざいか externalizing)・・・抱えている問題は、脳の症状によるもので、自分の人格と切り離して、区別すること。

病識・・・苦痛や支障があるのは、病気によるのだと自分でもわかっていること。

パソコンが悪いプログラムにはまっても、パソコン自体は壊れていないように、(純粋な)OCDならば、改善できます。

「自分の症状を克服しようと決心したとき、自分の心配が実体がないものだと納得したとき、そして、苦痛を取り除くために儀式行動(強迫行為)以外の新しい方法を見いだそうとしたとき、強迫観念や強迫行為の力が弱まるからです。」[1]p124


[6]家族との関係

・強迫性障害が重くなると、家族にいろいろな面で依存してしまうことがあります。

・次の2点はどうでしょう?
1)家族にお世話になっている部分。
例:
自分が働いていないのに、ご飯を食べられ、電気やガス代を払ってくれているのは、家族が支出してくれているためでは?
強迫行為で、洗剤やティッシュをたくさん使うけれど、自分の収入で、買い物に行っていますか?
タオルをものすごく使う人は、自分で洗濯していますか?

2)強迫観念による要望に、家族が巻き込まれていないか?
例:
替わりに掃除してもらっている。
自分の症状に影響するエリアには、近づけさせないようにしている。
外から帰ってきたら、家族に着替えや体を洗うことを強いている。
家族に「大丈夫?」と聞いて、確認の念を押してもらっている。

強迫行為に家族を巻き込むことが多いと、それが少ない人に比べ、患者さん自身の重症度も増してしまう傾向があります。

患者さんの症状が重ければ、すぐに働けないのは、もっともなことです。お世話になることが悪いとは限りません。

しかし、家族だって、自分の人生があります。
そのため、巻き込みをできるだけ減らしていけるといいのです。そのためには、まず巻き込んでいる部分に気づいてください。

参考文献

[1]エドナ・B・フォア博士&リード・ウィルソン博士(片山奈緒美訳)「強迫性障害を自宅で治そう!」VOICE
[2]Christine Purdon, David A. Clark,「Overcoming Obsessive Thoughts: How to Gain Control of Your OCD」2005
[3]スタンレイ・ラックマン著、監訳者作田勉「強迫観念の治療」世論時報社(2007)p56-57

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