1-1.強迫症 強迫性障害(OCD)とは? 症状と表れ方

[1]強迫と病名

強迫=不合理だとわかっていながら、ある考えや行為にとらわれ、おさえられないこと。

そのような特性をもつ精神科の病気が、強迫症/強迫性障害、
英語ではObsessive-Compulsive Disorder、略してOCDと呼ばれます。

注:患者さんが、自分の考え、行為が、どこか異常だとわかっているかどうか(自我違和感)をどのくらい自覚しているかは、個人差があります。

[2]主な強迫症の表われ方・タイプ

強迫症の表われ方は、患者さんによって、様々です。どれか一つではなく、複数のタイプをもつ人が多いです。タイプ名は俗称です。

汚染・不潔/洗浄(不潔恐怖:contamination/washing)

考え・感情
汚れや汚染物質が、他の人は気にならないレベルでも気になります。それらが広がることで、とても悪いことがもたらされるように思え、嫌悪、不安を感じます。
汚れ・汚染物質の例:
汚れ、トイレ、排泄物、体からの分泌物、土、汚染物質、不特定多数の人がさわるもの、特定の人(嫌な人、加害者、トイレで手を洗わない人など)・・・


行為
汚れ・汚染物質が広がってしまうことを避けるために行う行為です。そのため汚れや汚染物質にできるだけ触れないようにし、触れかもしれないと思うと洗浄、除菌を行います。重症度が増すと、その洗浄、除菌の行為の回数が頻繁、もしくは長時間になっていき、自分でコントロールすることが難しくなります。
例:
手洗い、シャワー、着替え、洗濯などが過剰。
入浴での洗浄、トイレとその前後の行為のためにかかる時間が長い。
汚いと思うドアノブを直接、さわらないで、ティッシュ、使い捨て手袋越しや、指の一部で触れる。
そのために、ティッシュ、除菌用品、トイレットペーパーなどを大量に使う。

手洗い

被害・加害/確認(確認恐怖:checking、危険恐怖、加害恐怖)

主な気になる場面
火の元、戸締り、提出するとき、場所を離れるとき、運転、インターネットの操作、人とすれ違ったとき・・。
考え・感情
物などをなくしたり、ミスによって、大きな被害がもたらされることを恐れる。
自分のした些細なことがきっかけで、誰かを重大な事故、災難にもたらしてしまうのではないか。

行為

確認する場所が多い、同じ場所を何度も確認する。
さっき行った短期の記憶に自信が持てずに、何度も確認したくなってしまう。

自分への被害が気になる被害タイプと、自分がしたことがきっかけで他人、所属先に被害や迷惑を与えてしまう加害タイプその両方をもつタイプとがある。

病気(疾病恐怖)

考え・感情
内科、外科での検査では、異常が見つからないのに、重大な病気(がん、HIV、失明など)になってしまうことを過剰に心配する。

行為

病気について、過剰に調べる。再検査を何度も受けたり、ドクターショッピングが過剰。独自の健康方法を儀式的に行う。

身体の一部

考え・感情
体のある部分に何か欠陥、異常があるように思え、不安になったり、気になってしかなくなる。

行為

体の気になる部分を何度も見たり、さわったりして確認する、もしくは見ることを避ける。

揃える(ordering)・ルール

考え・感情
起く位置、回数、順番、言葉など、自分で決めたルール通りでないと、気がすまない。すっきりしない。

行為
位置を厳密に揃える、数える。ルールに合わないものを排除する。

完璧(不完全恐怖)・厳密性(scrupulosity)

考え・感情
わずかな欠陥、あいまいさが耐えられない。物事の解釈、道徳、法律などをきちんと守っているか、他の人がこだわらないところまで、厳密に解釈してしまう。自分の思い通りにならないと、やり直したくなる。

行為

頭の中で、完璧かどうかを考え続けたり、そのルールに沿って、行動したり、やり直す。

縁起・宗教(縁起恐怖)

考え・感情
自分独自に神仏や縁起を解釈して、バチが当たることや不幸が起きないかを過剰に恐れます。縁起のいい数字、ジンクスを意識し過ぎて、それに少しでも反したらとても悪いことが起こりそうな気がする。
日本では外国と宗教への考え方が異なり、宗教の戒律を守っているかというような強迫観念はあまり見られない。

行為

祈り方、縁起を気にする範囲が過剰。例えば、廊下から仏壇までの歩数や歩くタイミングが決まっている。不吉だと思うもの、数字、色などを避ける。

[3]診断基準

診断は、医師によって、国際的な基準 DSM-5 ICD-10 に基づいて行われます。次のA.-D.が、DSM-5でのOCDの診断基準です。[1]

A.強迫観念、強迫行為の両方、もしくはいずれかをもちます。

強迫観念 obsession
頭の中で繰り返し現れ、離れない考え、衝動、イメージ。それらは、ある時期に、侵入的で、不適切な感じがする。患者の多くに、強い不安や、苦痛を引き起こす。
思い浮かぶ考え、衝動、イメージを無視しようとしたり、抑え込もうとしたり、何らかの思考や強迫行為によって打ち消そうとする。
(観念・・・事実や経験にもとづかない頭の中だけの考え。思い込み。)

強迫行為 compulsion
強迫観念による苦痛や衝動に駆られて、それらを打ち消すか緩和、回避するために、繰り返しの行為、何らかの独自のルールに従わなくてはならない行為を行う。

強迫行為には、体を動かす行動による行為と、頭の中の考えによる行為とがある。
その行為は、現実的には意味がない、もしくは明らかに過剰である。しかし、そのような自分でもどこかおかしい(不合理)と思っている人と、その不合理感があまりない人とがいる。

B.強迫観念、強迫行為による時間の浪費がおおむね1日に1時間以上。
苦痛を引き起こす、

または職業、学業、日常生活での大事なことを行うことに支障をきたす。

C.D.薬物による作用、他の精神疾患ではうまく説明できない。

[4]説明

1)強迫行為を、何度も繰り返しても、安心を得ることが難しく、図のような観念と行為の悪循環にはまります。

強迫観念と強迫行為

2)強迫的な考えや行動は、軽いものなら多くの人が経験します。
例えば、多くの人が使いたくないほど汚い公共のトイレって、たまにあります。
しかし、
それほど汚くない公共のトイレも全部ダメだというと、外出して、トイレに行きたくなったら困ります。それがエスカレートして、
公共のトイレが使えないから外出できる所が限られる、
トイレのそばですら近づけない、
トイレで手を洗わない人が触ったかもしれないと思うものは、すべて触れない
・・となると、まともな日常生活をすることができなくなってしまいます。
また、
洗うことやシャワーが何時間もかかる人、
洗い方が過剰で、皮膚が荒れて、出血している人、
水道代が2ヵ月に何万円もかかる人、
入浴があまりに辛くて、かえって入浴をしなくなってしまう人もいます。


3)OCDの嫌な感情は不安とは限らない

感情とは、短い言葉で表される気分の波のようなものです。
嫌悪、もやもや(すっきりしない)、恐怖、怒り、イライラ、あせり、落ち着かない・・・

4)恐怖症とOCDの違い

恐怖症は、虫、爬虫類、高所、閉所、雷など特定のもの、場所に対して、恐怖感が強くて、生活に支障をきたす精神疾患です。現在でも、高所恐怖のように、**恐怖と呼ぶことがありますが、かつては、不潔恐怖、縁起恐怖も、それらと同列に扱われていたのです。
恐怖症では、恐れるものを過剰に回避しますが、十分に離れれば、恐怖は治まります。しかし、OCDでは苦手な場所から十分離れた後も気になる考えが止まらなかったり、過剰な洗浄やルールにとらわれた強迫行為をします。

[5]その他の表れ方の名称

強迫行為:

中和 強迫観念を打ち消そうとして、あえて逆のことをする行為。悪いことの反対に、あえて良いことをします。例:悪い数字の代わりにいい数字を思い浮かべる。

頭の中での強迫行為 強迫観念や嫌な考えを何とかしようと、頭の中で行う儀式。
例:頭の中での確認(メンタルチェッキング)、中和、数える、特定の言葉を唱える、考え方をする。[2]

状態による分類:

強迫思考(obsessive thought) 本人の意思に反して、考え・イメージが、ひんぱんに思い浮かびこびりついて離れずに苦痛となります。[3] 意思とは無関係に、瞬間的に頭をよぎる考え(断片的なものも含む)を侵入思考と言い、健常者でもほとんどの人に見られます。しかし、強迫の場合、この侵入思考が、意思に反して意識にこびりついたり、苦痛を与えます。頭の中で、何らかの意図的な思考をしていると考えられます。[2][4]

強迫性緩慢(かんまん:obsessive slowness) 頭の中で強迫的な考えにとらわれているため、行為にとても時間がかかってしまい、他人には緩慢(動作がゆっくりで遅い)と見えます。

強迫性ためこみ(hoarding)(楽しみではなく、強迫的な動機によって)物を収集が過剰となったり、物を整理できずに、部屋が散らかったり、捨てることが困難になる。
注:「ためこみ」は状態を示す言葉なので、強迫性ではない場合がある。強迫症以外の精神疾患(ADHD、認知症、うつ病、統合失調症など)による場合もあるが、それらの精神疾患では説明ができないものをためこみ症という。

[6]うんちく・メモ

・ObsessiveーCompulsive Disorderのdisorderは、不調、病気という意味で、**症/**障害と訳されます。苦痛があり、日常の活動に支障をきたしている場合です。

・1990年頃までは、強迫神経症と呼ばれていました。
OCDの症状の表れ方を不潔恐怖、縁起恐怖など**恐怖と呼ぶのも、その頃のままの名称です。
しかし、現在の診断基準では、**恐怖というのは、広場恐怖や恐怖症では使われますが、OCDでは使われなくなっています。

その他の用語・刑法では脅迫、民法では強迫と書く。
・Obsessive=頭にこびりついて離れないもの(観念)。
 Compulsive=無理強いされる(行為)。

参考文献

[1]American Psychiatric Association [著]「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(2014)
[2]Padmal de Silvia & Stanley Rachman著、貝谷久宣訳「強迫性障害」ライフサイエンス(2002)
[3]加藤華子、濱田秀伯 強迫性障害の症状学、精神科治療学Vol.22 No.5 May2007,p486
[4]丹野義彦「エビデンス臨床心理学」日本評論社(2001)
[5]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)

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