1-1.強迫症 強迫性障害(OCD)とは? 症状と表れ方

目次

[1]強迫と病名
[2]強迫症の主な表われ方・タイプ分類(1)
[3]症状と診断基準
[4]OCDの特性
[5]状態によるタイプ分類(2)
[6]うんちく・メモ

[1]強迫と病名

強迫=あることをするよう、無理に強いること。無意味で不合理と思える考えや行為が、意志に反して支配的になる状態。(参考:goo国語辞書

つまり、ある考えや行為にとらわれ、ほどほどができない、加減がわからなくなる状態

そのような特性をもつ精神科の病気が、強迫症/強迫性障害、
英語ではObsessive-Compulsive Disorder、略してOCDと呼ばれます。

注:患者さんが、自分の考え、行為が、どこか異常だとわかっているかどうか(自我違和感)をどのくらい自覚しているかは、個人差があります。

[2]強迫症の主な表われ方・タイプ分類(1)

強迫症の表われ方は、患者さんによって、様々です。どれか一つではなく、複数のタイプをもつ人が多いです。タイプ名は俗称です。

汚染・不潔/洗浄(不潔恐怖:contamination/washing)

考え・感情
汚れや汚染物質が、他の人は気にならないレベルでも、広がったり、自分の大事なものを汚さないかが気になってしかたありません。もし大事なものに汚れが広がると思うと、嫌悪、不安を感じるので、その前に、阻止したいと思います。
汚れ・汚染物質の例:
汚れ、トイレ、排泄物、体からの分泌物、土、汚染物質、不特定多数の人がさわるもの、特定の人(嫌な人、加害者、トイレで手を洗わない人など)・・・


行為
汚れ・汚染物質だと思うものに、できるだけ触れないようにし、触れかもしれないと思うと洗浄、除菌を行います。そして、大事にしておきたいものが、汚れることを食い止めます。重症度が増すと、洗浄、除菌の行為の頻度、時間、範囲が増していき、自分でコントロールすることが難しくなります。
例:
手洗い、シャワー、着替え、洗濯などが過剰。
入浴での洗浄、トイレとその前後の行為のためにかかる時間が長い。
汚いと思うドアノブを直接、さわらないで、ティッシュ、使い捨て手袋越しや、指の一部で触れる。
そのために、ティッシュ、除菌用品、トイレットペーパーなどを大量に使う。

手洗い

被害・加害/確認(確認恐怖:checking、危険恐怖、加害恐怖)

主な気になる場面
火の元、戸締り、提出するとき、場所を離れるとき、運転、インターネットの操作、人とすれ違ったとき・・。
考え・感情
物などをなくしたり、ミスによって、大きな被害がもたらされることを恐れる。
自分のした些細なことがきっかけで、相手に重大な事故、災難にもたらしてしまうのではないかと思います。

行為

確認する場所が多い、同じ場所を何度も確認します。
さっき行った短期の記憶に自信が持てずに、何度も確認したくなってしまう。

自分への被害が気になる被害タイプと、自分がしたことがきっかけで他人、所属先に被害や迷惑を与えてしまう加害タイプその両方をもつタイプとがあります。

病気(疾病恐怖)

考え・感情
内科、外科での検査では、異常が見つからないのに、重大な病気(がん、HIV、失明など)になってしまうことを想像し、過剰に心配します。

行為

病気について、過剰に調べる。独自の予防方法を儀式的に行う。再検査を何度も受けたり、ドクターショッピングが過剰。

身体の一部

考え・感情
体のある部分に何か欠陥、異常があるように思え、不安になったり、気になってしかたなくなります。

行為

体の気になる部分を何度も見たり、さわったりして確認する、もしくは見ることを避けます。

位置、順番、タイミングなどの感覚

考え・感情
位置、順番、タイミングなど、自分で決めたルール通りでないと、気がすまない。ルールにぴったり一致した感覚を求めて、そうでないとやり直したくなります。
オリンピックの選手のような完璧な注意の行き届き方を、日常的な歩く、着替えるなど動作にまで求める人もいます。
このタイプでは、不安や恐怖のような感情がほとんどない人もいます。それよりも、不完全さに落ち着かずに、正したい衝動に駆られてしまいます。

行為
位置を厳密に揃える(ordering)、
自分が求めたルールでできるまで何度でもやり直す

完璧(不完全恐怖)・厳密性(scrupulosity)

考え・感情
わずかな欠陥、あいまいさが耐えられない。物事の解釈、道徳、法律などをきちんと守っているか、他の人がこだわらないところまで、厳密に解釈してしまいます。自分の思い通りにならないと、やり直したくなります。

行為

頭の中で、完璧かどうかを考え続けたり、そのルールに沿って、行動したり、やり直す。

回数・数字

考え・感情
悪い数字の日時・回数だと何か悪いことが起きそうな気がして、不安になる、もしくは、感覚的にすっきりしません。
そのため、いい数字で行おうとします。

そのような数字、回数を当てはめる範囲が過剰である。
例:
洗いものをするときは、常に回数を数え、食器を1つずつ縁起のいい回数で洗う。
ちょっとした動作でも、目にした時計で4があると、やり直したくなる。
冷蔵庫の中の物、買い物をするときの個数にこだわる。


行為

回数を数えたり、時計を頻繁に見て、悪い数字に出合うと、やり直す。

縁起・宗教(縁起恐怖)

考え・感情
自分独自に神仏や縁起を解釈して、バチが当たることや不幸が起きないかを過剰に恐れます。縁起のいい数字、ジンクスを意識し過ぎて、それに少しでも反したらとても悪いことが起こりそうな気がする。
日本では外国と宗教への考え方が異なり、宗教の戒律を守っているかというような強迫観念はあまり見られない。

行為

祈り方、縁起を気にする範囲が過剰。例えば、廊下から仏壇までの歩数や歩くタイミングが決まっている。不吉だと思うもの、数字、色などを避ける。

[3]症状と診断基準

診断は、医師によって、国際的な基準 DSM-5 ICD-10 に基づいて行われます。次のA.-D.が、DSM-5でのOCDの診断基準です。[1]

A.強迫観念、強迫行為の両方、もしくはいずれか(の症状)をもちます。

強迫観念 obsession
頭の中で繰り返し現れ、離れない考え、衝動、イメージ。それらは、ある時期に、侵入的で、不適切な感じがする。患者の多くに、強い不安や、苦痛を引き起こす。
思い浮かぶ考え、衝動、イメージを無視しようとしたり、抑え込もうとしたり、何らかの思考や強迫行為によって打ち消そうとする。
(観念・・・事実や経験にもとづかない頭の中だけの考え。思い込み。)

強迫行為 compulsion
強迫観念による苦痛や衝動に駆られて、それらを打ち消すか緩和、回避するために、繰り返しの行為、何らかの独自のルールに従わなくてはならない行為を行う。

強迫行為には、体を動かす行動による行為と、頭の中の考えによる行為とがある。
その行為は、現実的には意味がない、もしくは明らかに過剰である。しかし、そのような自分でもどこかおかしい(不合理)と思っている人と、その不合理感があまりない人とがいる。

B.強迫観念、強迫行為による時間の浪費がおおむね1日に1時間以上。
苦痛を引き起こす、

または職業、学業、日常生活での大事なことを行うことに支障をきたす。

C.D.薬物による作用、他の精神疾患ではうまく説明できない。

[4]OCDの特性

4-1)強迫観念と強迫行為の悪循環
強迫行為によって、一時的に問題を解決できても、また強迫観念にとらわれ、図のような観念と行為の悪循環にはまります。

強迫観念と強迫行為

4-2)OCDは、誰もが経験する考えや行動の延長上にある
心配ごとや、確認や洗浄の行為が、一時的に増える程度であれば、多くの人が経験します。
また、新型コロナのような感染症が流行すれば、その状況に応じて、目に見えない感染を警戒して、マスクをつけたり、除菌や洗浄を念入りにすることが必要となります。

OCDでは、そのような心配や行為が、他の人より、どこか過剰です。
また、その方法が、手洗いの回数は、縁起悪い4回を避けるなど、どこか現実には意味をなさない、必要性がない部分があります。
しかし、本人には、どこまでが正常な範囲で、どこからが過剰なのか、その境目がわかりにくいのです。
そして、自分ではコントロールが難しく、日常生活に支障をきたしてしまっている状態が症状です。

4-3)嫌な感情は不安とは限らない
感情とは、短い言葉で表される気分の波のようなものです。OCDでは、さまざまな嫌な感情が伴います。
嫌悪、不確かさ(もやもやして、すっきりしない)、不安、恐怖、怒り、イライラ、あせり、落ち着かない・・・

[5]状態によるタイプ分類(2)

強迫行為:

中和 強迫観念を打ち消そうとして、あえて逆のことをする行為。悪いことの反対に、あえて良いことをします。例:悪い数字の代わりにいい数字を思い浮かべる。

頭の中での強迫行為 強迫観念や嫌な考えを何とかしようと、頭の中で行う儀式。
例:頭の中での確認(メンタルチェッキング)、中和、数える、特定の言葉を唱える、考え方をする。[2]

状態による分類:

強迫思考(obsessive thought) 
目に見える強迫行為がなく、頭の中での強迫症状です。強迫症の多くのタイプの患者さんが経験しています。
強迫思考がほとんどで、目に見える強迫行為が見られない患者さんもいます。そのようなタイプを純粋強迫観念(Pure-Obsession)と呼んだこともあります。しかし、DSM-IVという診断基準から、頭の中の強迫行為が知られるようになり、症状の見方も変わってきました。
意思とは無関係に、頭をよぎる考え(断片的なものも含む)を侵入思考と言いますが、強迫症では、侵入思考に対し、頭の中での強迫行為や、何らかの意図的な思考(打ち消し、中和など)をしていることがわかったきたためです。くわしくは、当サイト:精神科全般>1-3.嫌な考えへのとらわれをご覧ください。

強迫性緩慢(かんまん:obsessive slowness)
頭の中で強迫的な考えにとらわれているため、行為にとても時間がかかってしまい、他人には緩慢(動作がゆっくりで遅い)と見えます。

強迫性ためこみ(hoarding)
(楽しみではなく、強迫的な動機によって)物を収集が過剰となったり、物を整理できずに、部屋が散らかったり、捨てることが困難になります。
注:「ためこみ」は状態を示す言葉なので、強迫症ではない場合があります。くわしくは、当サイト:精神科全般>2-8.ためこみ、ゴミ屋敷と精神疾患をご覧ください。

[6]うんちく・メモ

・ObsessiveーCompulsive Disorderのdisorderは、不調、病気という意味で、**症/**障害と訳されます。苦痛があり、日常の活動に支障をきたしている場合です。

・1990年頃までは、強迫神経症と呼ばれていました。
OCDの症状の表れ方を不潔恐怖、縁起恐怖など**恐怖と呼ぶのも、その頃のままの名称です。
しかし、現在の診断基準では、**恐怖というのは、広場恐怖や恐怖症では使われますが、OCDでは使われなくなっています。

その他の用語・刑法では脅迫、民法では強迫と書く。
・Obsessive=頭にこびりついて離れないもの(観念)。
 Compulsive=無理強いされる(行為)。

参考文献

[1]American Psychiatric Association [著]「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」(2014)
[2]Padmal de Silvia & Stanley Rachman著、貝谷久宣訳「強迫性障害」ライフサイエンス(2002)
[3]加藤華子、濱田秀伯 強迫性障害の症状学、精神科治療学Vol.22 No.5 May2007,p486
[4]丹野義彦「エビデンス臨床心理学」日本評論社(2001)
[5]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)

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