2.精神バランスの取り方

著者:有園正俊 公認心理師

いろいろな状況に応じて、気持ちはゆらぐもので、時には自分が嫌になることだってあるものです。しかし、自分の内面を直接、コントロールすることは難しいものです。それよりも、行動を変えることで、内面のバランスをとっていきます。
このページでは、認知行動療法(参考:精神科の情報>1-3.認知行動療法の基本と対処)の考え方を元に、自分の精神や感情の安定、否定的な気持ちを肯定できるように役立つポイントをまとめました。

目次
[1]現状でできることを探す
[2]回避、先延ばしはダメ
[3]少しでも手を付ける(行動化)
[4]他人に相談できないか
[5]予定を書いて、実行したらチェックを入れる
[6]気分の波があって当たり前

[1]現状でできることを探す

たとえば、
・借金が多い。
・家族や誰かとの対人関係でストレスを抱えている。
・病気を抱えている。
というように、自力では、すぐに変えることが難しいことはあるものです。
このような現状を踏まえて、いくらかでも、できることを探します。
頭の中で、ただ心配していてるのは、案外、精神的な疲労を伴うものです。
将来のことを計画するのはいいのですが、否定的な感情にかられて、将来のことをあれこれ心配するのはお勧めしません。それよりも、「今、今日できること」に目を向けます。

そのためには、まず自分の状況を観察します。できれば他人事のように客観的に。
自分の中の考えや体調、自分の周囲の状況というように、自分の内側と外側に分けて眺めてみることでもいいです。
そうすることで、嫌な感情に流されていた主観から、ちょっと離れることができます。

[2]回避、先延ばしはダメ

本来やるべきことを、避けたり、先延ばしたりしていると、取り掛かることが、よけい億劫になりがちです。
通常、学校・職場・家庭での業務がある日は、それらを行ってから、趣味の時間を過ごすことができます。その方が、精神的にも健康を保ちやすいわけです。しかし、不登校やひきこもりなどで、そういう制約がないと、日課をしないまま自由に好きなことをできてしまいます。しかし、このような生活は、どこか肝心なことを避けていないでしょうか?過剰に避けていると、自信は育ちません。

[3]少しでも手を付ける(行動化)

やろうと思っていたことができなくて、落ち込んだり、自分が嫌になったことはありませんか?
計画をしても、できなかった体験が積み重なっていくと、自分への自信が減り、否定的な思考が増えていきます。=悪循環

自信は、考え方だけ変えようとしても、育ちにくいものです。
小さなことでも、自分との約束を守って、できた体験を重ねることで、自分への否定的な思いが減り、自信がついてきます。
全部きちんとできなくても、ほんの少しでも、手をつければ、まったく何もしないで、もんもんと過ごすよりましです。

少しでも、行動に移します。その日に行うことは、最初は1つでも、2つでもいいです。
先延ばしして、溜めていたものを、一気に片づけようとすると、無理があって、達成することが難しくなることもあります。
たとえば、部屋の片づけという大まかな目標よりも、
例;
流しの食器を1つでも洗う、
棚の一部だけでも不用品を捨てる、
というように、片づける場所を、細かく限定してもいいです。
このように、予定を細切れにすることをスモールステップといいます。

それができたら、その後で、やることを徐々に増やしていけばいいのですから。

[4]他人に相談できないか

現状を眺めて、自分一人では、よくわからない、解決が難しそうだと思ったら、相談できそうな人を探す方法もあります。
人を探すことだって、スモールステップの行動です。

特に、精神症状を抱えている人の中には、大きな決断が難しいことがあります。しかし、大きな決断でも、延ばし過ぎてはきりがないので、無理をしない範囲で、できれば他の人と相談しつつ進んでください。

[5]予定を書いて、実行したらチェックを入れる

手帳やスマホなどに予定を記入します。それは、自分との約束です。

実行したら、赤線などで、チェックを入れます。

このような行動を毎日続け、チェックが付いた記録を溜めていくと、自分の変化が実感できます。(セルフモニタリング)
始めるまではおっくうに思えても、「何だかんだ」過ごしてみましょう。!(^^)!

[6]気分の波があって当たり前

・昨日より、うまく行かないことは、誰でもありますが、精神の病気をかけていると、よりその影響を受けやすくなります。
波が大きいときは、あまり無理をせずに現状維持をし、波が和らいだら、またリセットして、再スタートします。

このようにして成功体験を、徐々にですが蓄積して行きます。1日1日の好不調にとらわらないで、数ヶ月、半年、1年という単位で、ながめてみてください。
できなかった部分に、目を向けてとらわれるのではなく、わずかでも、今までできた部分を大事にします。
自己肯定感というと、よくわからないと言う人もいるのですが、何らかの事情で、否定的な気持ちが強くなってしまう人はいるものです。そのような場合、上記をすることで、結果として、少しでも否定的な気持ちが和らいでいけばと思います。