4-5.漂白剤~強迫症で警戒し過ぎてしまう人へ

著者:有園正俊

漂白剤に使われる次亜塩素酸ナトリウムは、除菌、殺菌としても用いられることから、強迫症(OCD)による強迫行為として過剰に使ってしまう人もいます。一方で、漂白剤、トイレの洗浄剤、カビ取り剤などが怖くて、使えないという人もよくいます。
「混ぜるな危険」と表示されているのを見て、混ぜてもいないのに、「危険」という言葉から怖さを感じ、うかつに変な使い方をしていないか、ちょっと触れたけれど大丈夫かと疑念がよぎってしまうためです。
このページでは、それらの洗剤、薬剤の解説をします。
目次
1.主な成分
2.混ぜると危険な理由
3.次亜塩素酸ナトリウムとは?
4.強迫症の人向けの注意点

5.参考

1.主な成分

洗濯用と、台所用、カビ取り剤とで、成分が異なる場合があるので、区別します。

洗濯の漂白剤:・・・塩素系:次亜塩素酸ナトリウム、酸素系:過酸化水素
台所の除菌洗剤、カビ取り剤・・・次亜塩素酸ナトリウムのほかに、界面活性剤という洗剤、水酸化ナトリウムなどが含まれる。

2.混ぜると危険な理由

衣類などについた汚れは、空気中の酸素と結びついて、酸化した物質が多いです。
そのため、アルカリ性の漂白剤を使って、酸性の汚れと化学反応することで、落とします。

物質は、酸素はO2、水はH2Oという分子になっていると安定します。
しかし、酸素原子が1個のOだと不安定で、すぐ他の原子とくっついて化学反応をします。アルカリ性洗剤は、Oのような不安定な物質が含まれています。
そのため、アルカリ性洗剤を容器から出して、洗濯ものと混ぜれば、酸性の汚れと結合して、中和してしまいます。
汚れの他にも、酸性の物質は、空気中にたくさんあるので、容器から出して、放置しておけば、やがて中和してしまいます。
つまり、「混ぜるな危険」は、容器から出してすぐの状態でのことで、時間とともに、その危険は減っていき、やがてアルカリ性による危険はなくなります。

ちなみに、台所洗剤などに含まれる水酸化ナトリウム(NaOH)は、OHを持っているので、これも不安定で、やがて空気中の二酸化炭素と反応して、炭酸ナトリウムと水になって、安定します。炭酸ナトリウムは、ラーメンのかん水に使われる物質です。

3.次亜塩素酸ナトリウムとは?

消毒・除菌のために、家庭や産業のさまざまな場面でよく使われます。カビ取り剤にも使われます。水道水を作るときの塩素消毒にも用いられますが、水道水の塩素は濃度が非常に薄いので問題ありません。
プールのカルキでよく使われる次亜塩素酸カルシウムは、別の物質です。いずれも次亜塩素酸なので、塩素の臭い(カルキ臭)がします。

分子式はNaClO=塩(NaCl)に酸素原子が1つ付いたものです。

容器から出た次亜塩素酸ナトリウムは、放置しておくと酸素原子(O)が、徐々に他の物質とくっついていきます。そして、塩(NaCl)が残ります。
NaClO→NaCl+O

下の写真:次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤(洗濯用)を器に入れました。

漂白剤(洗濯用)を小皿に出した


何日も、自然に放置しました。

漂白剤を放置して乾燥した状態

残ったのは、ほぼ塩(NaCl)の結晶です。
「混ぜるな危険」という状態ではなくなりました。
注:漂白剤は、メーカーによって、次亜塩素酸ナトリウム以外の成分が含まれている可能性が考えられるのと、空気中には、さまざまな物質が浮遊しているため、完全に塩と断言できるわけではないので「ほぼ」としています。
また、台所の除菌剤やカビ取り剤を放置すれば、界面活性剤などによる他の物質も混ざるはずです。

次亜塩素酸ナトリウムは、濃度が低ければ、撒いても、その後、さっと水で流せばいいのです。水に溶けて流れやすい性質があるためです。もし流しが不十分でも、わずかな塩が残る程度です。
ただ、塩によって、さびたり、変色しやすい素材では、注意した方がいいです。

4.強迫症の人向けの注意点

1.強迫症が重くなると、他者から見て問題ない行動でも、本人には、「大丈夫かなと?」と不安に感じる疑念がよぎりやすくなるのが特徴です。
それと、理屈よりも、不安・怖さに、判断が引っ張られやすくなります。そして、不安・怖さが強まると、恐れる範囲も拡大してしまうことがあります。そのため、「混ぜるな危険」の文字が、混ぜる場面以外でも、怖いことがありそうに思えてしまいます。そのように、強迫症は、患者さんを心配させますが、一般に売られている漂白剤は、多くの人が使っている製品です。そのため、そういう強迫的な心配を真に受けないでいられるといいのです。

2.強迫症のために、次亜塩素酸ナトリウムを使った後、「わずかでも残っていたら危険」と考え、恐れが強く、使用法に書かれている以上に何度もすすいでしまうことが強迫行為になる場合があります。
また、漂白剤の容器にちょっとでも触れるのを恐れて、容器には近づかないというのも、回避という強迫行為になります。それらの強迫行為を続けていると、強迫症を悪化させてしまうことがあります。

3.漂白剤には「熱湯で使わない」と注意書きされています。それを過剰に解釈して、40度程度のお湯でも漂白剤を使わないようにしている強迫症の人もいました。
熱湯というのは、煮立った素手でさわれないほど熱い温度のことです。温度が高いと、酸化反応が激しくなるためです。夏なら水だって30度以上の温度になってしまうことがあるので、お湯程度なら、警戒する必要はありません。

5.参考

日本食品洗浄剤衛生協会>出版物・資料のご案内>食洗協シリーズ
>「シリーズ6:殺菌・消毒に活躍する次亜塩素酸ナトリウム (追補版付き)」(2004)
(注:食品衛生を扱う専門家向けで、一般の生活者向けではありません。)