1-4.強迫症に関連する要因

強迫症/強迫性障害(OCD)の原因は、よくわかっていません。しかし、科学的に関連すると考えられている要因について、簡単に紹介します。

[1] 発症、悪化に影響するもの
[2] 性差と性ホルモン
[3] 有病率と時代・地域による違い
[4] 脳の働きでの仮説?

[1] 発症、悪化に影響をするもの

・Thomas G.Aら(2018)によると「強迫症を持つ人は、症状を悪化させる要因として心理社会的ストレスを特定することが多く、発症の原因を人生のストレスの多い時期やトラウマ的な出来事に遡る者も少なくない」[1]そうです。
・いじめ、犯罪での被害体験、性被害など、強いストレス体験を経験した後、強迫症状が出現する人もいます。

・子どもの頃の家族との関係(虐待など緊張が強い環境、過度に細かく厳格なしつけ、など)が関係があると考えられるケースもありますが、原因の特定は、困難な面が多いです。

・精神的・物質的(お金や家事)に自立してない・依存しやすいことが、周囲の人を強迫症に巻き込み、悪化や治療の進行に影響を与えることがあります。

[2]性差と性ホルモン

患者さんの割合は、男女でほぼ同じです。ただ、発症する年齢に、男女で差があります。[1]p30
女性は、思春期、妊娠、出産、更年期のように女性ホルモンが変化する時期にOCDを発症・悪化する人がいます。
また、月経の前後に強迫などの精神症状や、身体症状が高じる人もいます。

[3]有病率と時代・地域による違い

強迫症を生涯で経験する人の割合は1-3%と報告されています。[2]p28-30

1994年に、アメリカ、カナダ、プエルトリコ、ドイツ、台湾、韓国、ニュージーランドの7ヵ国が協力した調査として、Weissmanらは、一般人口に対するOCDの有病率を比較しました。この調査によると、台湾を除いたOCDの12カ月有病率は1.1~1.8%で、生涯有病率は1.9~2.5%でした。台湾以外の国では、地域による大きな違いは見られませんでした。[3] そのため、日本は、台湾以外の6カ国とあまり違いはないと推測されています。

また、昔からこのような病気の存在は知られていました。たとえば、17世紀に書かれたシェイクスピアの戯曲「マクベス」では、マクベス夫人が洗浄にとらわれる姿が描かれています。
そのような病気ですが、時代とともに、強迫的に気になる対象や、症状の表れ方が変化してきていると考えられます。
たとえば、現代、汚れ/洗浄タイプで、外の汚れを自宅に持ち込むことに強迫症状が現れる人がいますが、昔の日本の住宅は、トイレ、浴槽、井戸などは、母屋とは離れた場所に設置して、外に出ないと使えない構造だったので、そのような強迫行為はできなかったはずです。しかし、昔の人でも、母屋を汚さないよう念入りに拭いたり、洗浄の方法を念入りにするような強迫行為をしていたひとがいたのではと推測されます。
また、強迫症のために、本の間に何か挟まっていないかを捨てる前に確認したり、不特定多数の人が使う図書館の本を避ける人がいますが、現代では、ペーパーレスで、本やプリントをなるべく持たないようにすることも可能です。その一方で、IT機器での操作ミスや、個人情報の流出を過剰に恐れるというように、強迫の対象が、時代とともに、移り変わることがあります。

[4]脳の働きでの仮説?

脳の働き(機能)の異常としては、主に次の2つの仮説が考えられています。

4-1.ネットワーク仮説

脳内のいくつかの部位の活動が高まることから、それらを結ぶネットワークの機能障害が考えられています。(参照:4-1.OCDと脳、[2])
また、脳画像(MRI、PETなど)を使った研究も多く、脳内のそれらの部位で、活動の高まりが見られると報告されています。
そして、行動療法などの治療によって症状が改善されると、その高まりの部分も改善されるという報告があります。

4-2.セロトニン仮説

脳内の神経伝達物質のセロトニンに作用する薬がある程度効果があることから、セロトニンが関係していると言う説があります。しかし、それだけで説明できるものではなく、セロトニンが一次的な病因ではないらしいという報告もあります([3]p11)。

参考文献

[1]Thomas G.A, Benjamin K, et al.(2018)The Role of Stress in the Pathogenesis and Maintenance of Obsessive-Compulsive Disorder.
[2]原田誠一編「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006)
[3]Weissman MM, Bland RC, Canino GJ, Greenwald S, Hwu HG, Lee CK, Newman SC, Oakley-Browne MA, Rubio-Stipec M, Wickramaratne PJ, et al.1994 The cross national epidemiology of obsessive compulsive disorder. The Cross National Collaborative Group. J Clin Psychiatry. Mar;55 Suppl:5-10.